紅蓮亭血飛沫

映画スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめての紅蓮亭血飛沫のネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

良かった!
素直にそう思える程に、切なさと優しさが込み上げてくる物語と結末に満足です。
開幕早々に激しいアクションシーンでこちらの興味をがっしりと掴んでくれる手腕も素晴らしく、終盤付近の決戦ではスタプリの総結集とも言える程にスターカラーペンを複数活用し、個々の形態を披露してくれる見応えもあり。

また、本作は“宇宙を舞台にした”スタプリだからこそ手掛けられた描写、世界観、物語構築が見事。

本作のゲストキャラ・ユーマはひかる達が願えば地球のどこへでもワープ移動出来るという能力があり、ひかるとララは地球上の世界遺産ともいえる場へと次から次へと趣いて行きます。
ナスカの地上絵、火山、ウユニ塩湖等々、世界各国の絶景を堪能するひかる達を見て、視聴者である私も一緒にたくさんの場所を旅しているような気分に。
何より、宇宙に進出してたくさんの惑星に行き、宇宙人と交流を果たしてきたスタプリだからこそ、“地球にも宇宙同様に、たくさんの神秘的な絶景が広がっているんだ”と灯台もと暗しを連想させられる着地点が心地いいです。

更に、本作のメインテーマである“未知の生命体との交流”なのですが、ユーマと深く関わる事となる人物をひかる達“地球人”ではなく、“宇宙人であるララ”に主体を置いた判断も良し。
地球人を主体に未知の生命体とコンタクトを取るシチュエーションは最早常套のそれですから、“宇宙人・ララ”と“未知の生命体・ユーマ”の行く末に焦点を当て続けてみせたのはこの手のSFジャンルでも中々珍しい部類に入るのではないでしょうか。

ユーマに感情移入する立ち位置をララに担わせ、ひかるはというとそんなララを優しく説き伏せるポジションに徹底させる、その塩梅もグッド。
星奈ひかるという人物は時にその場の状況を客観的に、現実的に捉える見方を示しますよね。
そのことを裏付けるドラマが炸裂した回としてはTV本編32話が印象深かったです(フワを守りたいとする思いに対して驕りがあったのではないか、と自問自答する事となる)。
そのようなキャラクターとして下積みが成されていたからこそ、単体映画という大舞台でもララをメインに添える事が出来たのでしょう。
ユーマを巡る物語の大部分はララに任せ、ひかるはというと物語を進行させる主人公としての立ち位置をキープしたまま、ララを支えるポジションに落ち着く事でしっかりと存在感をアピール出来ていました。

そして終盤なのですが、これがとにかく美しく、壮観。
周囲の影響で善にも悪にもなり得る生命体、というのは使い古された設定ですが、それが惑星規模ともなれば格段に見映えします。
ひかる、ララと共に過ごして来た思い出を経たユーマはララに似た姿を手に入れ、かけがえのない思い出を糧にこれからユーマは、一つの星になっていく…。
ロマンチック、の一言ですね。
物語の余韻を損なわせないよう、普段のプリキュア映画同様にダンスメインの賑やかなEDにせず、物静かな主題歌をバックにユーマとの思い出を振り返る事のみに集中したその決断に拍手!(ダンスに関してはクライマックスで披露しましたしね)
最後のカットなんて、英語でタイトル名を提示してくる辺りがもう…心を掴まれました。

宇宙を舞台にしたスタプリならではの描写、物語がたくさん詰まっており、同時にSFを題材にした作品だからこそ着手出来た面白い発想がたくさん散りばめられている作品です。
アクションシーンの力の凝り様に滾らされるも良し、SFならではの神秘性に陶酔するも良し。
プリキュアシリーズ単独映画の中でも上位に来る完成度を誇っています。
お勧めです!