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機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイのazitarouのレビュー・感想・評価

4.3
「本当にこれガンダムが出てくる作品……?」と思うくらい全編を通して上品で色気がすごい。絵や演出はもちろん、会話もあからさまな解説台詞は抑えられているようで、言ってることは分からないが、表情を見れば誰がどう考えているのかが伝わってくるので、アニメーションと言うより洋画のような印象。
戦闘シーンはなんと言ってもMSの市街戦の恐ろしさがこれでもかと描写されており、20mを超えるクソデカい鉄の巨人が揉み合ったらどんな惨状が繰り広げられるのかが嫌でも見せられる。避けたミサイルや弾が街を破壊し、バーニアを吹かせば暴風が巻き起こり、飛び散ったビーム粒子が街を焼く。足元で逃げ惑う人にとってはたまったもんじゃない。
ギギという少女は非常に蠱惑的で、時に人を惑わし時に突き放すようでいて、気まぐれや奔放という言葉では片付けられない複雑なキャラ造形。ヒロインという枠に収めていいのか迷ってしまう。
MSはロボットというよりも運用されているただの兵器といった塩梅で、連邦の武力の象徴街をのし歩く様は戦争映画のパレード。空中戦は空を飛ぶというよりも、高高度まで飛び上がって落下しながら軌道制御する動きに納得する一方で、ペーネロペーの異形のシルエット、かん高い飛翔音、重力を感じさせない三次元飛行の異常さを際立たせてくる。まるで特撮映画の怪獣のようで本当にすごい。なんだこのMS。
今回は作戦成功ムードの幕引きだが、主人公がテロリストということでこの後絶対にろくでもないことになるんだろうな、と節々に暗喩してくるのでまあそういうことだよね……。いや、本当にいいものを観た。
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