ShinMakita

イン・ザ・ハイツのShinMakitaのレビュー・感想・評価

イン・ザ・ハイツ(2021年製作の映画)
1.4

ニューヨーク、ワシントンハイツ。ドミニカ&プエルトリコ移民が占めるこの地区でコンビニを切り盛りする青年ウスナビは、美容院のネイリスト・バネッサに片思い中。そのバネッサはファッションデザイナーを夢見てダウンタウンへの引っ越しを計画している。そんな2人と親しいロザリオ家は、移民二世のパパが社長を務めるタクシー会社。パパの自慢はスタンフォードに通う秀才の娘ニーナ。だがニーナは、大学生活の虚しさと差別に悩み、ハイツに戻ってきてしまう…


「イン・ザ・ハイツ」

以下、忍耐とネタバレ。

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久々の、大スクリーンに映える本格的ミュージカル(世界中の映画好きは「キャッツ」は無かったことになってるからね)。ダイナミックなダンスシーンの迫力と色彩豊かな映像は確かに劇場向きです。移民コミュニティが抱える問題点や、普遍的な郷里愛・親子愛なども描かれていて、料金分はちゃんと楽しめます。


でもね…


ミュージカル弱者でありながら生意気に「面白いミュージカル映画」というのを定義するなら、以下の2つをクリアした作品、ということになります。

その1:ドラマの中に「負の要素」とか「闇」があるかどうか

…サウンド・オブ・ミュージックではナチの存在、オペラ座ではファントムの復讐、ウエストサイドでは決闘、というように、バッドエンドの予感を感じさせるものが少しでも無いと、平たく言って飽きてしまうんだよな。要は、音楽やダンスを抜いたストーリー部分に起伏があるかどうか、なんです。



その2:キラーチューンが存在するかどうか

…一度聴いただけでしっかり耳に残る、鑑賞後に鼻歌うたいたくなる曲が一曲でもあればいいんです。あの「キャッツ」ですらメ〜モリ〜🎵ってのがあったよね。


では、「イン・ザ・ハイツ」はこの2つをクリアしたのか?


残念ながら否です。確かに移民の過去の苦労・現在の問題、色々語られて社会派的視点も持っているように思えるけど、こういう地区で外せない問題について、一切言及してません。そう、犯罪です。本作に出てくる人たちは皆善人で優しくて、めちゃくちゃ治安がいい街に見えるけど、ありえません。停電になったら花火でお祭りって…普通は暴動と略奪じゃないの? まぁアブエラ婆ちゃんの独唱と末路については「闇」と取れなくもないけど、やや弱いよね。

キラーチューンについては、本作、ほんとに致命的。確かにラップやラテンミュージック、オーソドックスなバラードと多彩で、プレタイトルのメインテーマのサビはパワフルなんだけど、映画観た後でメロディが耳に残った曲、俺は一個も無かったんだよね。


というわけで、これまで観てきた数少ないミュージカル映画たちと比較すると、最下位に近い作品だったかなと。あくまで個人の感想なんで、あしからず。

…あ、あと余談。本作、スター級のアクターが全くいないんですけど、ニーナのパパだけは別だと言っておきたいな。演じるジミー・スミッツは、刑事ものファンにとってはかなりのスターなんすよ。「マイアミバイス」第1話で、タイトル直後に爆死するソニーの相棒エディを演じてましたよね。「LAロー」や、デビッド・カルーソの後任として主役を演じ続けた「NYPDブルー」なんかが代表作。俺的には、エルモア・レナードの「グリッツ」の映像化作品で主役だったのが印象的。スターウォーズに出た時も驚いたけど、ミュージカル映画でお目にかかるとは夢にも思わなかったです。
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