みおこし

イン・ザ・ハイツのみおこしのレビュー・感想・評価

イン・ザ・ハイツ(2021年製作の映画)
3.9
今やアメリカ音楽業界を語る上で欠かせないリン=マニュエル・ミランダが手掛けたブロードウェイ・ミュージカルの映画化。”躍動感”と”生命力”。そんな2つのキーワードが脳裏をよぎる、夏らしい爽快な1本でした。ラテンの力!!激アツ!!

NYの片隅の街ワシントン・ハイツに暮らすウスナビ、ヴァネッサ、ニーナ、ベニーという4人の若者を中心に、彼らの葛藤や青春を描いた群像劇。
監督は『クレイジー・リッチ!』を大ヒットさせたジョン・M・チュウ。彼はラティーノではないけれど、アメリカを生きるアジア・コミュニティの一員としての想いを重ねながら撮影したのだとか。MGMのミュージカル黄金時代に始まり、ハリウッドでは白人によるミュージカル作品が量産されてきたわけで、だからこそこういった別の人種の視点からの作品に触れると新しい発見がありました。
同じニューヨークでも例えば『セックス・アンド・ザ・シティ』のマンハッタンの様子と、本作に登場するワシントン・ハイツでは完全な別世界。経済的にも、そして待遇的にもなかなか歯がゆい経験をしながらも、夢を持つことを決して忘れないワシントン・ハイツの人々の姿に胸打たれました。ここを飛び出して大きな夢を叶えたいという想い、飛び出したけれど志半ばで戻ってきた悔しい想い、ずっとここで人生を送ってきたけれどそれが正しいことだったか答えの出ない想い…。三者三様の葛藤を描きながら浮き彫りになるのは、自分にとっての”ルーツ”の尊さ。日本の東京という全く異なった環境にいながらも、故郷だったり出自だったりここまでの自分を創り上げた要素へつい思いを馳せてしまいました。

全編ラテン・ミュージックで彩られたサウンドトラックの素晴らしさは言わずもがな。とにかく歌って踊って、嫌なことは吹き飛ばせ!というポジティブなパワーに圧倒されるばかり。心折れそうな時こそ、音楽って自分に力を与えてくれるんだなとしみじみしてしまいました。
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