水野統彰

ある船頭の話の水野統彰のネタバレレビュー・内容・結末

ある船頭の話(2019年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

流し見で見終えて、エンディングをむかえたときに流し見したことを後悔した。
バッドエンド過ぎると。思わず見返したくなる映画だった。

川を渡す船頭「トイチ」。トイチは川を渡す船頭として山あいの川沿いに住む一人の老人。近く、その川には橋が渡されるということで町はにわかに橋の完成を待っていた。

橋の完成はトイチの船頭としての役目を失うことを意味する。やがて自身の生活軸、人生の軸を失うかもしれない不安と恐怖を抱えながらも船頭としての日々を過ごしていたトイチのところに傷ついた一人の女の子が流れ着く。
女の子の名前は「フウ」。
はじめは不器用な間柄でありながらも、フウは次第にトイチに心を許し始める。そしてトイチも同様にフウとの日々を楽しみにするようになり、トイチもまた活気づいた。

ある日、トイチのもとに「先生が亡くなった」という知らせとともに、その遺体を静かに埋葬したいから船を出してくれ、との依頼があった。
依頼の通り船を出し、遺体を運んだトイチ。
物語はフィナーレへ向かう。

橋が完成し町は近代化が進む。トイチの元を訪れる人は少なくなり、せいぜいトイチの身を慰めるために船を利用とする人ばかりになった。

トイチが町に薬を貰いに行っていた日に事件は起こる。
フウが強姦される。

家に戻ったトイチは荒れ狂うフウを目前にしなだめるも、もはや船頭としての役目も失い傷ついたフウさえ守れなかったトイチは悲嘆に暮れ、フウとともに船に乗りそのまま旅立った。
人からの軽蔑・侮蔑に耐え、人間らしい嫉妬心に耐え、なおも役目を果たそうとしたトイチ。その心は同じく人間の欲と裏切りによって崩れ去った。
水野統彰

水野統彰