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ハミングバード・プロジェクト 0.001 秒の男たちのjamのレビュー・感想・評価

3.9
humming bird の羽ばたき一回ぶん
0.016秒とは。

もしも。
自分に0.016秒=16ミリ秒しかなかったら。
世界はどんな風に見えるんだろうか?
ヴィンセントの呟き。


完全に、予告に騙された…
何度も劇場で観た、その予告は。
1ミリ秒を削るために無茶なミッションに挑んだ男たちを、コミカルに映していたと思ったのに。


カンザス州のデータセンターとNYの証券取引所を、直線の光ファイバーで結ぶことにより、高速取引を実現させる。
そんな夢のようなプロジェクトが実在。

野心家のヴィンセントと、
従兄弟で天才型のアントン。
無謀ともいえる挑戦。
土地の買収、資金繰り、元上司との駆け引きなどの難題に阻まれそうになりながら。
時にコミカルに、口八丁手八丁で乗り切る様は、一種痛快、であったものの…



アントンのオタクっぽい天才ぶり。
"人間を使い捨てにする女"
元上司エヴァの憎らしさに、ハラハラしながら。


いつの間にか。
病に侵されながらも、ひた隠し。
自分がやらなければ、と猛進するヴィンセントに、限界が近づいて…

ふと、入ったセラピー系のマッサージを受けながら、涙を流す彼を観て。
もう、いいんだよ…お疲れ様…
そう伝えたい衝動が湧き上がり。


一度は、分かり合えなかった人たち。
地に足をつけて、働く農民。
どんなに大金を積まれようとも。
重要なのは、株とかお金じゃない。


全てを失った時

連れて行って欲しい
ヴィンセントが望んだのは。
あの農民たちの世界。

もう、ケーブルで迷惑はかけないと伝えるため。


雨粒がゆっくりと。
従兄弟二人の上に落ちていく。


過去の記憶も無く
16ミリ秒の前も無く
16ミリ秒のイメージを脳裏に焼き付けられて
その匂いと感覚だけだったら、僕はどうなるんだろう?


アントンの優しさ

100年生きた人と、
同じくらい生きられるよ…



ラストシーンの美しさが。
胸の奥に。
静かに、沈んで。
jam

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