SHIDOU

劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明のSHIDOUのレビュー・感想・評価

5.0
【令和最恐のトラウマムービー】

心掻き毟られ、何度も涙した。
「どうしてこんなことに…」頭を抱えた。
目を背けたくなる事実に慄然とした。
「もうやめてくれ…」と思わず声が漏れた。

物語が、狂いすぎている。
これは映像の暴力か、鬼畜の所業か?

鑑賞直後、茫然自失のなか判断に迷う。
俺はこの映画を評価して良いのか…?
これは心にダメージを与えるためだけに作られた物語ではないか…?
という疑念が頭を巡る。

夫婦で観て、その後しばらくは放心状態。
気分もすぐれない状態が続いた。
だが時間が経つとともに、心を鷲掴みにされてしまっていることに気づく。

夫婦ともアニメのみ観てきていたが、
その日のうちに、原作全巻大人買い。
その日のうちに、原作を全て読み切る。

一通り読んだのち、改めて映画に想いを馳せると、違った面も見えてきた。

この物語においては、冒険と狂気とは表裏一体であること。今作の敵、ボンドルドの行動も、狂ってはいるが理解することはできた。一度内容を見たこともあるが、漫画で読む限り、息が苦しくなるほど心がえぐられることはなかった。

ではなぜ劇場で魂が抜けそうになるほど多大なるダメージを受けたのか?

原作の再現度は展開、作画含め完璧。アニメーションとしてのクオリティは極めて高い。動くことの意味、そして心地よさが表現されている。

劇伴も非常に印象的で、ケピン・ペンキンの楽曲が静かに染み入るように突き刺さった。特にreBIRTHという楽曲は数日たった今も、心の中で鳴り続けている。

そして全体に漂う、執念すら感じるほど凄まじい原作への愛(今作自体、「愛」は一つのテーマでもある)。

かつて原作をここまで忠実に再現し、かつエモーショナルな映像に仕上げた映画って、あっただろうか。これ以上ないほど真っ直ぐに、つくしあきひとの世界を映像化した結果、原作の持つ狂気性が120%増幅されてしまい、観る人に強烈なトラウマを植え付けてしまうインパクトを持ち得たのではないか、という結論に達した。

人にオススメしていいものなのかは正直わからない。心揺さぶられるものを欲しているなら、一見の価値はあると思う。


ただし、劇薬です。


※TVアニメの続きの話(もしくは総集編前後編の後)なので、それらは観た前提となりますのでご注意を。
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