パワードケムラー

ゴーストバスターズ/アフターライフのパワードケムラーのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

 『ゴーストバスターズ/アフターライフ』では第一作と第二作への溢れんばかりのリスペクトと幻の続編のオマージュ、リメイク版から脈々と続くメッセージがしっかり込められていてよかった。誰が何と言おうとも、これまでの30年の総括と新たなる旅立ちとして最高の仕上がりだったと言っても過言ではない。

 人間が真似できない完璧なバランスで積み上がった本、ディナを襲ったときと同じように椅子から飛び出す手、不自然にゴーストを呼び寄せ易い金属を使った建造物、保安官がフィービーに「誰に電話する?(Who you gonna call?)」という質問とそして繋がるレイのオカルト専門の本屋、クレイアニメーション的な変身をするアニマトロニクスのテラードッグにレイへの「お前は神か?」という質問、電流付きの透視実験etc......初代へのリスペクトはあげればキリがない。

 そして幻の続編にあった過去のゴーストバスターズがゴーストとなって未来のゴーストバスターズを助けるという展開もキッチリ拾っていたのが嬉しい。本来は幻の続編脚本ではゴーストになるのはビル・マーレイ演じるピーター・ヴェンクマン博士だが、今作ではイゴン・スペングラー博士へと変更されている。これは彼を演じたハロルド・レイミスが亡くなったということもあるが、それだけではない。

 幻の続編が幻となったのは製作が難航し、撮影開始となったところでハロルド・レイミスが没してしまったことが大きいが、それでも撮影開始に漕ぎ着けたのは彼が生前にバラバラになったゴーストバスターズを再結成させていたからなのだ。

 当初、脚本に難色を示したビル・マーレイが降板を発表し、映画そのものの存続が危ぶまれたのだが、そのときにビルを呼び戻したのが他でもないハロルド・レイミスだった。

 そしてシガニー・ウィーバーや引退していたリック・モラニスも参加を発表した。そうだ、彼がバラバラになったゴーストバスターズを再結集させ、再結成させたのだ。その後、前述の通り諸事情で製作は難航し、2014年にハロルドが亡くなったことで幻の続編は消え、彼抜きの世界観としてリメイク版がつくられた。

 しかし、今回はCGでゴーストの姿としてイゴンが甦り、再び4人が集まれた。フィービーが破壊神ゴーザとのビームの撃ち合いで負けそうになっているとき、ゴーストのイゴンが一緒にプロトンパックを支えてくれる場面がまんま『ドラゴンボール』のセル戦の親子かめはめ波のようで熱いものを感じさせてくれたし、突如として現れたゴーストイゴンに対して、二度見したり不気味がる初代ゴーストバスターズメンバーの顔は「あ、ゴーストバスターズだ。ゴーストバスターズが帰ってきたんだ」と思わせてくれる。

 イゴン・スペングラー博士の孫たちがバラバラになった初代ゴーストバスターズを再結集させるという設定が現実で見事にリンクしていたのだ。これ以上のサプライズ、そして感動があるだろうか。戦いを終えて3人が各々イゴンへ向けた言葉には、イゴンの向こうにいるハロルドへの言葉もあったかもしれない。そこに出る「ハロルドに捧ぐ」の文字には涙を禁じえない。

 この点は後述もするが、ウィストンが最後に語った「我々は永遠にゴーストバスターズだ」という言葉には、このシリーズを観て科学の世界をみ夢見たすべての少年少女とみんなを再び会わせてくれたハロルドへの想いを感じた。

 また、リメイク版が無かったことになっているのでは?という不安もあったが、先ほども触れたラストのウィンストンの「みんなに夢を追い続けることの大切さを伝えたい」という場面で救われた気がした。第一作を観て科学を夢見た少年少女だけではなく、リメイク版を観て科学を夢見た少年少女にも伝えたい30年間の総括としてメッセージが詰まっている。

 この作品は80年代洋楽に彩られたただ懐かしい映画ではなく、イゴンにそっくりなフィービーをはじめとする新しい才能の開拓と彼女らの旅立ち、新しいジョーク(ここでも31アイスクリームでいじられるポール・ラッド)など、これからゴーストバスターズに触れるファンにも優しい作品になっている。

 長々と書いたが、結論は最高だということだ。もう一度映画館で観る日が待ちきれない。