リアムギャラガー

窮鼠はチーズの夢を見るのリアムギャラガーのネタバレレビュー・内容・結末

窮鼠はチーズの夢を見る(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「あら!お洒落なタイトル!うふふ、きっと二人がお互い愛し合いながらチーズケーキとか食ってる映画なのね!!」と思って観に行った愚か者はいるかな〜!!??は〜い!!!!!!!(挙手)

チーズケーキ出てきたよ。不穏な空気と共に出てきた。

めちゃくちゃ良かった。めちゃくちゃ良かったけど、予告編こんな不穏な感じじゃなかったじゃん…「キスして」とか言ってたじゃん…もしかして知らないだけでちゃんと不穏Verの予告とかあんの…?マジでなんも調べずに行ったから色々面食らった。

モテすぎてもはや可哀想な男(恭一)とその男に7年間恋してる粘着質でヤンデレで可哀想な男(今ヶ瀬)と、他にも可哀想な人たちがいっぱい出てくる。人生見てるみたいだった。予告もちゃんと観てなかったからあまりにも泥沼で最初びっくりした。おいおい俺は二人が暖かラブラブハッピーな生活を営んでいる様子を観にきたんだが…という気持ちになったよ。めちゃくちゃ好きです。

序盤は体感5分に一回やってる。これがR15なのか…詳しい規定は知らんけど…
全然関係ないんだけど、邦画久しぶりに観たからみんな胸毛生えてなくてめちゃくちゃ新鮮だった

てか恭ちゃんの家、めちゃくちゃオシャレすぎて最初見たとき乾いた笑いが出た。ニトリの商品カタログに出てくる部屋だった。一人暮らしの部屋があんなにオシャレなわけある????床に丸まった靴下とか落ちてろよ。あとコンセント無い掃除機めっちゃいいなって思った。欲しい。

もうずっと「今ヶ瀬!!!そんなやつ捨てて俺のとこに来い!!!!!!」という気持ちと「恭一!!!!!!もういい全部捨てて俺のとこに来い!!!!!!!」という気持ちの間で情緒が暴れてたよ。「恭一くんサイテー!」って言う気持ちもめっちゃわかるんだけど、恭一の気持ちもめちゃくちゃわかるからなんかほんと…人生…って感じだった…

救いようがないのは、恭ちゃんがただのクズじゃなくて、本当にずっとフラフラしているだけだからなんだと思う。これで「ウェーイw 俺めっちゃモテとる〜ww」みたいな感じだったらクズでしかないんだけど、恭一は違うんだよな…何もわからないなりに愛を表現してるっていうかさ…今ヶ瀬が恭一からもらったワインを「勿体ないから飲まない」って言って恭一が「来年またあげるよ」って返す時、恭一は嘘ついてるつもり無いんだよな。本当に精一杯の愛情表現で、それが自分の中の最上級の愛で、でもどこか「それっぽい」ことをしている感が否めなくて、いつまでもこちらに向いているとはとても思えない不安定な愛で、だからたまきも今ヶ瀬もどれだけ辛くても恭一のこと嫌いになれなくて…つら…
観ているこっちもだんだん「この恭ちゃんは本当に心から笑ってるのかな…楽しいって思ってるのかな…」って心配になるんだから、こんなのが現実にいたらとんでもないよな…もうずっと笑っててほしいし、笑わせられたらめちゃくちゃ幸せに感じるでしょ…そして恭ちゃんは多分毎回ほんとうに心から笑ってるんだよなぁ!!心から笑ってるけど、笑い終わった後はもうこっちのこと忘れてるみたいな…とんでもねぇ男だな……そりゃ束縛したくなるよ…って思うと最後にたまきが「恭一さんが違う人を好きでもいい。見て見ぬ振りするから」みたいなこと言うの、本当に恭ちゃんのこと大好きなんだろうな…たまき……

「恭ちゃんはハーメルンの笛についていく鼠なの」っていう喩え、めっちゃわかる。でも一番切ないのは、ハーメルンは今ヶ瀬でもなければ美咲でも夏生でもない、誰でもないってことなんだよな。恭ちゃんがフラフラついていってる笛の音は誰かが操れるものじゃなくて、だから誰も恭ちゃんを繋ぎ止められるわけでもなく…みたいな…ほんと罪深い男だ…みんなが恋をした恭ちゃんは、誰かの笛について行ってたんじゃなくて、ただ一人でフラフラしてただけの恭ちゃんなんだよなぁ。だから誰のものでもない恭ちゃんを誰からも奪うことはできないんだな…みたいな…

「恋愛でじたばたもがくより、大切なことが人生にはいくらでもあるだろ」って恭一が今ヶ瀬に言う台詞、うぉって感じでめっちゃ頭に刺さった。
これを言っちゃうのが恭一なのがすごいよな…
「いや、お前のせいだよ」って誰もが思うけど、でも実際、恭一の方からしてみれば自分に執着してくる人たちのことは不思議でしかないんだろうな。

理性では誰も傷つけたくないと思っているのに本能的に無自覚に他人を傷つけている人って本当にモテるよな。モテるしめちゃくちゃ執着される。あと多分、自分の発言がいつか嘘になるって気づかないっていうタイプ…だからみんな恭ちゃんが好きなんだよ……

なんていうか、恭ちゃんは良く言えば素直なんかなって思った。小学校で習った「悪いことをしたら謝る」を素で行なっているというか、誠心誠意謝ったら次の段階に行っちゃう人なんだろうな、みたいな。「(今ヶ瀬が)苦しそうだったから」別れたって言ってたみたいに、けじめをつけることを淡々とやってしまう人なんだろうなって。実際、正直にたまきに「別れよう」って言うし、今ヶ瀬にもちゃんと「別れよう」っていうし、ビンタも受け入れる。でもマジでそれだけなんだよ…だから最後、全部のけじめをつけた恭一だけが一人ですっきりした顔してて、それだけでひと段落ついたと思ってるけど、実際はたまきも今ヶ瀬もまだ泣いてるっていう……こうして書くとマジで罪な男だな…魔性じゃん…でも愛に鈍感な人間からすればこれはもう精一杯の誠意なんだよな…恭一の精一杯の愛は、恭一を好きな人が恭一に向けるクソでか感情とは全く比べものにならないってことなんだと思う。マジで誰も悪くないんだって…

別に恭一もモテたからこういう性格になったわけじゃなくて、ほとんど生まれつきだと思うしさ…現代人って結構こういう人多そうだね。でかい愛を向けられたら受け取るけど、精神的に同じものを返せなくて恋人に責められて、本人は「???」ってなってるやつ…かと言って、たくさん愛してくれてるしこっちも愛を示そう、って思ってプレゼントとかあげても、「そうじゃない」感が出ちゃうやつ……お前が俺にくれたサイズのでかい愛を俺はお前にあげられませんが?ってなっちゃうやつ……人生だな。

恭一…みんなお前にゾッコンラブだよ……
あと標準語喋ってる恭ちゃん素敵だったよ!!