まろか

窮鼠はチーズの夢を見るのまろかのネタバレレビュー・内容・結末

窮鼠はチーズの夢を見る(2020年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

大倉くんの恭一はクッッッッソ最低野郎なのに、優しくてずるくてとっても魅力的でした。最低だとわかるのにこんな人に惹かれてしまう…。

キスを拒んだくせに「早く帰っておいで」とか、生まれ年のワインを「来年もまたあげるから」とか、家賃もったいないからって「家引き払わないの?」とか、自分の発言が今ヶ瀬にとってどれだけ影響力があるか自覚してない。

たまきが椅子に座ったのを見て、おいでって自分の隣に呼んでさりげなく椅子からどかしたのも、恭一らしいやり方でずるいなぁって思った。

ラストも、縋るたまきを振って今ヶ瀬を待つって決めて、青いカーテンは外して灰皿を洗って机に置いて、今ヶ瀬の椅子に座って妙にすっきりした顔で今ヶ瀬を待っている姿は、
最初のクソ最低野郎からみると素敵な変化だし、本気で人を好きになって、心底惚れて、「男なんて」と言ってた恭一にとって今ヶ瀬が例外になったってことなんだけど、

灰皿大事にしてるのも今ヶ瀬を待ってるのも、今ヶ瀬知らないから!未練たらったらで振り切れてないくせに他の男と寝ようとして泣いてるから!
待つんじゃなくて今度は迎えにいってやれよ!!!!って思いました。



そんな大倉くんの最低野郎恭一も素晴らしかったけど、今作はなにより成田凌の今ヶ瀬がとっても素敵でした。

お寿司屋や大学時代など、恭一を見つめるあのうるうるした恋する瞳はもちろん、

誕生日プレゼントで奮発してくれた生まれ年のワインを、驚きながらも嬉しくて「これは開けない」って大事にワインを胸に抱く姿とか、当たり前のように来年の話をされた喜びと戸惑いが入り混じった表情とか、

「俺はお前選ぶわけにはいかないよ」って言われたときのショックを受けた横顔と、
必死で笑顔浮かべて物分かりの良い顔して「はい」って恭一に返事して、なつき先輩をお持ち帰りした恭一を見送りつつ、恭一の飲みかけのお酒を飲んだりするとこ(さりげなく今ヶ瀬の執着深さが出ててとても好き)とか、

初めて最後まで恭一を抱いて、達してから恭一に覆い被さったときの満足げな表情とか、

「あなたじゃダメだ」って思わず言っちゃって、「お前が言うならそうなんだろうな」「終わりにしよう」って言われたときの涙目で恭一を見つめる、傷ついたような縋るような、祈るような絶望したような表情とか、そのあと泣き崩れる痛々しい姿とか、

たまきと結婚する、って言われて「体の関係とかいらないから、そばにおいて」って必死に縋る表情とか、

なんかもう恭一を見つめる瞳表情の芝居が細かくてセリフなんかなくてもいろんな複雑な感情が伝わってくるから、もう観ていてしんどかった…。


あと濡れ場がめちゃくちゃ攻めてましたね。美しくてエロかった…。
たまきが帰ったあとの、今ヶ瀬が抱かれてるシーンはひたすらしんどくて切なかった。

明日彼女と別れる。一緒に暮らそう。
そう言われても信じられなくて逃げ出してしまう今ヶ瀬が、残していった灰皿をゴミ箱に捨てた今ヶ瀬が、悲しかった。



原作だと2人は結局結ばれたはずなので、あのラストはこれで終わり!?ってとてもしんどくなりました。

多分今ヶ瀬はもう恭一を諦めたりできないと思うので、いつの日かまたふらっと恭一の様子を観に行って、彼がひとりなことを知って、恭一の元へ戻ったりするんじゃないかなぁ…いや戻るかな?
戻ってほしい願望はあるけどバッタリ会っちゃはない限りもう恭一の前に姿は見せない気もする。ただ恭一がひとりってわかったらめちゃくちゃ動揺して恭一のまわりうろちょろするんだろうな。

ぜひ戻ってきた成田凌の今ヶ瀬が観てみたい…続編とか絶対ないだろうけど…。


メイン2人だけでなく、たまきちゃんとかなつき先輩とか女性陣も良かった。

あとから思い返してもんもんとして、もう一度観たくなってしまう映画でした。
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