たっさん

フォードvsフェラーリのたっさんのレビュー・感想・評価

フォードvsフェラーリ(2019年製作の映画)
4.8
まさに最高の映画!
ここ近年公開された中でも個人的ベストとなる一作になりました。

実在するル・マン24時間レースでかつて連覇を果たしていた王者フェラーリの打倒を掲げたフォード社。
その元で描かれるのはシェルビーとケンの強い友情、憎たらしい企業側の思惑とが交錯する物語。
その塩梅が絶妙で高まる気持ちを抑えることが出来ません。

それを助長させるのがメインとなる車のシーン。スクリーン広がる迫力のスピードと、音響で唸るエンジン音。まず興奮しないわけがない!
車を早く走らせること、その異次元の速度に憑りつかれた男たちを描くうえで、レースシーンはもちろんだが、かすかに鳴るエンジン音や影を使って脳裏に焼き付く車たちを彷彿とさせる細かな演出は、言葉にしなくても伝わってくる。
理屈とかじゃない、ただ走りたいから走る。その姿は痺れるほどにかっこ良かった。

キャストはマット・デイモンや陰謀の副社長を演じたジョシュ・ルーカス、中立という立場を体現するリー役のジョン・バーンサルなど皆存在感があり、とても良かったが、特筆すべきはやはり、ケン・マイルズを演じたクリスチャン・ベイルだろう。
これまで私が見てきた彼の出演する作品の中でもベストアクトなのではないかと強く思った。スピードと己の限界を常に求め、最善のパフォーマンスを行う彼。それだけをただ純粋に求めて目を輝かせていたケンが、ある瞬間に見せる表情。この瞬間に我々観客はそんな彼だからこそ選択したことに涙を流すことしか出来ない。それは止めどなく出てきてどうすることも出来なかった。
この流れを作り上げたのは演出もだが、ひとえにクリスチャン・ベイルの圧倒的演技ゆえだろう。彼の見せる様々な表情が台詞は無くともスクリーンから物語ってくれる。
正直アカデミーでノミネートが無かったのが不思議に思うくらいのベストアクトであったと思います。

劇場という空間で楽しむ以外ない、渾身の作品です!!!
自信を持ってオススメします!
たっさん

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