映画初心者

DUNE/デューン 砂の惑星の映画初心者のレビュー・感想・評価

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)
4.3
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品。賛否が分かれる作品ですが私は「賛」です。開始数秒でもう素晴らしい作品だとわかる作品でした。映画館で見ないと凄みが分からない作品かもしれませんので、劇場で鑑賞するのがおススメ。特にIMAXでの鑑賞がベスト。

原作未読。リンチ版、ホドロフスキー版(ドキュメンタリー)は鑑賞済み。専門用語が多く、用語なのか登場人物の名前なのか区別がつかなくなることがあります。そのため、直前にデイヴィッド・リンチ監督版の砂の惑星を予習として見ておいた方が良いです。原作未読なものの、リンチ版も今作も原作に沿った進行なんだろうと思います、リンチ版と話はほぼ同じです。

紛れもなく「映像」「音楽」が売りの作品です。ドラマ性を期待する人は「否」の意見が出ると思います。リンチ版でもそうでしたが、話として絶賛するほど面白い作品ではない。王道な展開をひたすらしていく作品です。それだったら面白くないのかと言われると、「NO」です。映像と音楽の力で面白くなってしまう。特にリンチ版を見た人はわかると思いますが、話はほぼ同じなのにこんなに面白くなってしまうんだと驚きがあります。

映像に関して文字で表すのが難しいです。ヴィルヌーブ監督はさほどカメラを動かさない監督だからか良いショットだと感じることが多い。構図が良いショットが本当に多かった。特に好きなショットは味方側がカメラに背中を向けて惑星アラキスに降り立つところ。ヒーロー映画かと思いました。他にも空中戦の描写が面白い。トンボ型の機体が急下降する時に羽を全て閉じる。普通の発想だと羽を広げたまま角度を変えて急下降してしまいそうですが、羽を全部閉じてしまうんだと。その急下降した時の浮遊感も良きです。機体の大きさが半端でなく、機体と人間が同一ショットに収まると人間が豆粒ほどの大きさにしか見えないショットも良かった。

音楽。ハンスジマ―らしさが全開です。映像も凄いですが音楽も凄い。冒頭からどんちゃん騒ぎのビート。重低音で重苦しさを表現。音楽の影響か、2時間ほどずっと緊張感しっぱなし。良い意味で鑑賞後は疲労感が残りました。

物語としては知っている人も多いので特筆しませんが、王道の復讐物語。罠にはめられた自国軍の復讐のために主人公が立ち上がります。他のレビューを見ると「序章」と言っている人が多いですが、リンチ版を見た限り、折り返し地点を超えて中盤あたりまで今作は描かれています。そして後半部はさほど面白くない記憶があるので、そこまでPart2は話として期待しない方が良いと思います。

残念な点は2つ。肉弾戦アクションの乏しさ、Part1の終わり方です。
バリア表現はリンチ版に比べてまともな描写になっていますが、アクションの見せ方がイマイチでした。アクロバティックな動きのはずが、ヴィルヌーブ監督だからかカメラはさほど動かずに躍動感があまり出ていなかった。後半部は割りと肉弾戦の描写があったのでそこが残念。
Part1の終わり方も残念です。エヴァQみたく砂漠を歩いて終了だと良かったのですが、ラストあたりで小規模な現地民族との決闘が描写される。あれほど壮大な戦いがあったのに、ラストでそんな小規模なことするのかと思ってしまった。蛇足感がありました。砂虫が登場しそうな予感をさせてPart1終了の方が良かったと思う。

【総評】
肉弾戦と蛇足感のある終わり方が残念でしたが、映像と音楽の素晴らしさで映画館で見れて良かった。リンチ版と同じ話なのにこんなに面白くできてしまうのかという驚きがあります。予習としてリンチ版を見ると設定の飲み込みやすさ、そして今作の出来が良いことがわかると思います。

(余談)
トンボ型のマシンは、ジブリっぽいという感想をよく見たけど、ナウシカの影響元であるメビウスっぽいという表現の方がより正しいと思う。ジュールヴェルヌの「気球に乗って五週間」の表紙をメビウスが担当しているが、その絵はトンボや蝶にまたがっている人間が描かれている。おそらくこれがナウシカや今作のイメージの影響元だろうと思われる。
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