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DUNE/デューン 砂の惑星のPERSPECTIVEのレビュー・感想・評価

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)
5.0
とあるサイトにてヴィルヌーヴは「今回は若い方にも見てもらえるようなエンタメ作品にしようとしました」と語っている。

しかしこれがエンタメ映画ならこの世全ての映画はエンタメ映画であろう。

そも、ヴィルヌーヴの映画の真骨頂はひたすらにリアリズムを持った空間である。そこには没入感を阻害しないためあらゆる要素が調和を保って溶けあっているため、「尖り」や「映え」がないのだ。どうあがいてもエンタメにはなりえない。

ましてやこのDUNE, その傾向が過去作に比べて明らかに強い。とにかく映像は暗くて見えにくく、戦闘シーンなど大体が地味すぎてもはやダサい領域。SF活劇をお望みの方はまずご視聴を控えた方がよろしい。

ではまったくもってツマラヌ映画か。否、そこさえ割り切ってもらえれば活路は見いだせる。ここにあるのはこれまでのヴィルヌーヴが作り上げてきた演出の極北なのだ。

徹底的に色を抑えた空間は没入を通り越してトランス状態に陥りかねない領域に達しており、一度そこに入ってしまえば最後、繰り広げられるワンショットワンショットが猛烈な感慨をもたらしてくれる。そうして溜まった情緒はラストの「まったくもって地味なカタルシス」で見事に昇華する。とてつもない映像のマジック。この破壊力たるや半端なし。

しかしこの空間描写、演出だけなら1000%退屈かつ空疎なものである。それをこう言いたくなるまで面白くしていたのは各役者やサウンドデザインといった空間の色どりである。とりわけ劇伴はプログレ大好き人間としては即死物の出来である。サントラ3作全部買いてえ。でも金がない。と思ったらyoutubeに全部公開されてるし、泣くわそんなん。

とまあこんな感じで、宣伝にあるような安寧感は一切ございません。むしろ混沌しかない超極悪アート・ムービーというのが本質でございます。さあ、これまで培ってきた感性を棒に振る覚悟で皆様この映画に飲み込まれ、篩にかけられましょうぞ!
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