半兵衛

日本女侠伝 真赤な度胸花の半兵衛のレビュー・感想・評価

日本女侠伝 真赤な度胸花(1970年製作の映画)
4.0
任侠映画と西部劇のミックスという、一歩間違えれば珍品になりかねない題材を笠原和夫の徹底的に調査して骨太なドラマトゥルギーで仕上げる作劇術によって両立を成功させている。そして北海道と高倉健という最高の組み合わせも映画を更に魅力的に。

高倉健や藤純子が日本刀を使わず銃で敵を殺すなどいつもの任侠映画が好きな人には邪道なシーンが幾つか出てくるが、ヤクザ映画好きでありながら任侠映画が苦手な私にとってはむしろこういう変わったパターンの方が好みだったりする。ラストなんて西部劇のような銃撃戦になるが、高倉健と山本麟一という最高のコンビネーションが一方は遠距離で狙撃、一方は馬で暴れて敵を隅に追い込むという活躍するのでテンションが上がる。降旗監督の、活劇にポイントを置きつつもちゃんとドラマパートにも配慮している演出も悪くない。

いつもの男気に満ちたキャラクターではない、過去に土地を奪われ家族を死に追いやった一族に復讐するため道内に帰って来たダークな高倉健も魅力的。そしてその一族の娘であることを知り、葛藤しつつも愛する高倉の助けを拒み悪漢から自分の手で牧場を守ろうとするお嬢様キャラの藤も最高。その他にも藤をサポートする山本麟一、石山健二郎、清水元、小松方正(出てきたと思ったら藤が作った料理を何の断りもなく食べるシーンに爆笑)や、いつものふざけた感じではない終始真面目な山城新伍、冒頭悪人たちに対して啖呵を切る最高に格好いい藤の父親役の小沢栄太郎(そのあとすぐに死んじゃうけど)など、いつものヤクザ映画とは違ったキャスティングも面白い。もちろん悪役の名和宏&天津敏の安定した悪役ぶりも見事。

ただヒロインの本来の目的である『父の意思を受け継ぐ』を無視したラストが納得いかないんだよなあ、それを面白がる人もいるんだろうけど。あとラスト、行き先を聞かれたヒロインの髪が強風でなびいたあと「風に任せるわ」という台詞を言うシーンは大林宣彦や相米慎二みたいな演出で妙に印象に残る。
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