Elijah

グレース・オブ・ゴッド 告発の時のElijahのレビュー・感想・評価

5.0
満を持しての初日劇場鑑賞。
世界で一番好きな監督であるフランソワ・オゾンの『婚約者の友人』に次ぐ「静」の側の物語。
実際に起きた事件をもとに真正面から真摯に描いていく。
3人の男優を軸にリレー形式で語られていく出来事にこれほどまでに「虫唾が走る」ことはない。
被害者たちの視点からだけではなく、色んな角度から描かれ、当事者だけではなく周辺の家族まで様々な感情と苦悩する想いで巻き込むことを目の当たりにする。
教会側の世間体と建前上の対応に鑑賞しながら何度も「偽善者!」と叫びたくなった。
加害者の神父の若い頃が映し出されるたびに吐き気を催すほど。
もし自分が被害者の立場なら信仰を止めたくなるだろうし、名乗り出る勇気を持てるだろうか。
その彼らの行動に惜しみない尊敬の念を贈りたくなると同時に、彼らの心の傷が一日でも早く癒され穏やかに過ごせることを切に願わずにはいられない。
物語が緊迫する過程でドゥニ・メノーシェの存在と佇まいに少しばかりのオアシスに感じられ、スワン・アルノーの演技に涙を禁じ得ず。
一番最後の台詞が印象に残り、一番最後に表示される字幕に救いを見出す。
そして鑑賞後に原題「Grâce à Dieu」に篭めた意味合いを痛感する。
Elijah

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