ぴな

グレース・オブ・ゴッド 告発の時のぴなのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

スクリーン3

「スポットライト 世紀のスクープ」を観ていて良かった。
事の大きさ、根深さに改めて戦慄。
フランソワ・オゾンらしからぬ仕上がり。(良い意味で)

自分は病気だからと口先だけの謝罪をする神父以上に、もっと真摯な対応をしなかった枢機卿に苛立ちを覚えた。
仲介をしてくれた女性も、完全な味方というわけではなく、あくまで中立(やや教会より?)な態度に軽く失望を覚える。
彼らの中では、法による裁きではなく、「赦し」を得ること・「赦す」ことが双方にとってのゴールなのかもしれない。教会の存在を脅かす自体を避けるためにも。
信仰がいかに信者たちの生活や人生の基盤になっているかが分かる。
オムニバスではないけれど、3人の被害者にスポットを当てて順に描いていくことで、性的虐待がどんな影響を与えるかがリアルに観客にも伝わってきた。
直接的な描写はないものの、口頭による説明と、フラッシュバックのように差し込まれる直前のシーンに胸が苦しくなる。その後に何が起きるかを生々しく想像させる。
そして、信仰を切り離して考えられるのか、これからも信仰と共に生きるのか、信仰とは…という眼差しを感じるラストが良かった。

教会と信仰が幼い頃から日常に当たり前にあるから、被害者は名乗りを上げるだけでもこんなにいるんだろうな…。そして声を上げられない多数も。
誰かが声を上げてくれたら自分を声を上げられる、という気持ちはとてもよく分かる気がする。
だからこそ、声を上げることは大事だし、そういう人を批判してはいけない。
日本では何でも叩く傾向が強くて残念。
性被害に遭うと深く傷付くのは男も女も同じ。誰にも相談できず、忘れようとすることでその傷をなかったことにする、それがどれだけ苦しいことなのか、加害者はもっと知るべき。
この作品の中では両親に打ち明けた人もたくさんいたけれど、その反応は様々で、親が自分に寄り添ってくれたかどうか、もその後の人生にかなり影響を及ぼしていたように見える。

ジュリアン以降気になっているドゥニ・メノーシェさんが良い役!
ぴな

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