ベニーを救おうとするのは周りの大人で、一番向き合うべき母親は育児を放棄しているという皮肉。
さらに、周囲がいくら手を差し伸べてもベニーは自分を制御できず、結局暴走してしまうという負のスパイラルに陥いる地獄。
これだけでもやるせないのに、彼女が時折り優しい一面を見せるせいでさらに苦しくなる。同じ気持ちだったであろう福祉課のバファネが、耐えかねて泣き崩れるシーンはとても印象的。
また、終始緊張感が続いたのは主演であるヘレナ・ツェンゲルの演技力あってこそだと思う。多彩な表情変化が特に素晴らしかった。
投げやり感のあるラストは少し残念だったが、どう着地させても納得はいきそうにない。他人の無力さをまざまざと見せつけられた120分だった。
良作