Sophie

赤い闇 スターリンの冷たい大地でのSophieのレビュー・感想・評価

4.0
試写会にて鑑賞。

本作は、ソ連のスターリン政権下で1932年から1933年にウクライナで起こったホロコースト「ホロドモール」の悲劇を自身の目で目撃し、その事実を世界に訴えてウクライナの人々を救おうとした英国人ジャーナリストであるガレス・ジョーンズの報道の使命を全うしようとする勇姿を描いた社会派映画。事実を事実として描いた骨太の社会派映画ながらも、見事な脚色でエンターテイメント性をもった素晴らしい作品に仕上がっており、一人のピュアな青年の冒険物語といってもいい作品である。

監督はポーランドのワルシャワ出身のアグニェシカ・ホランド氏。彼女の父親の両親は第二次世界大戦中にナチス・ドイツがワルシャワのユダヤ系の人々が多く住む住宅街に設置したワルシャワ・ゲットーで亡くなっており、ホロコーストへの意識が高い人である。そんな彼女は娯楽映画職人ともいわれているのをご存じだろうか。私は暗く重たい社会派映画を見終わったにもかかわらず、おもしろかったと思ってしまった。目を背けたくなるようなシーンはもちろんある。しかし、観客をワクワクさせるような面白いと思えるシーンもあるのだ。このワクワクさせる脚色こそが、脚本家でもある監督の才能が発揮されている箇所であると思う。この映画に登場する、英国人ジャーナリストのガレス・ジョーンズ、普及のディストピア文学「1984」や「動物農場」で名高い作家のジョージ・オーウェル、Yellow Journalismで有名なアメリカの新聞社ハースト社は実在の人物及び会社である。しかし、主人公とこの作家及び新聞社の経営者との関係において、実際に映画で描かれたような事があったという史実はない。この史実にはないが、映画に描かれたことが起こっていてもさして違和感がない程度にドラマティックに演出されているところが観客をワクワクさせてくれる。映画のホームページや映画の予告を観てもそれは伝わらず、重たいテーマゆえに本作を観るのをためらってしまう人もいるかもしれないが、ぜひためらわずに観て欲しい。そしてこれを観た後に、ぜひ「ジョーンの秘密」も観て欲しい。これを観てから観ると理解しやすいと思います。
Sophie

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