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屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカのkakakaのレビュー・感想・評価

4.1
開始早々、せこせこと遺体処理に勤しむ男の背中を覗くようなショットでとらえ、ようやく廊下の灯りで彼の顔面を捉えた瞬間、やられました。
脂汗の浮いた顔に、へばりついた髪、斜視の瞳に光るハイライト。こいつはヤバい。そしてこういう映画が見たかった!と胸踊る。
画面のルックと手ざわりはトム・サヴィーニ先生の特殊メイクが冴える傑作「マニアック」を思い出しました。
しかし景気良くショットガンで頭を吹き飛ばすなんてシーンは皆無。
ひたすら掃溜めみたいな飲み屋で引っかけたおばさんを自宅の屋根裏に連れ込んで、力任せに泥臭く凶行におよぶ姿にカタルシスなんて微塵もありません。
生活が底辺、犠牲者も底辺、そして殺しも底辺。
でもホンカ自身が全然ひねくれて無いのがいい。ちゃんと仕事も探すし、タイプの女の子を見ると、頭の中は恋のお花畑になる。
ようは普通の男だし、別に格差社会だのなんだの、世の中恨んでないのがいい。酒場で馴染みの客と美味しいお酒を飲んで、可愛いあの子を妄想したりする、なんて慎ましい人生かな。
これもある意味「この世界の片隅に」だよ!!
最近やたらと目にする、やれ格差だ分断だのを嘆く映画にやや食傷気味だったけど、少なくともこの映画で描かれている人々は他人や社会に責任押し付けて文句たれるんじゃなくて、底辺を這いながらも、互いに寄り合って安酒をあおって、また明日だ。
掃溜めに花、ではないがペトラちゃん可愛い。ラストもSo Cool!!
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