猫

カニバ/パリ人肉事件 38 年目の真実の猫のレビュー・感想・評価

3.5
当たり前だけど、意志を持って観ないと観れない映画だ。
ピントをぼかした顔のズームが、数分続く。
ずっとこのままだったら、かなりしんどいなぁと思っていたら構図が少し変わる。
本、ビデオ、家族フィルム…
彼は今、何処に住んでいるのだろう…?
外国資本でなければ、たぶん制作出来なかったであろう作品。

私が佐川一政の名を知ったのは大学時代。
当時はかなりセンセーショナルな事件で、
ジャーナリズムは何故?を追及。
彼が小柄で仏で劣等感を抱いていた、などと書かれていた記憶あり。
その後「佐川くんからの手紙」という背表紙の本を図書館で見かけたけれど、読んではいなかった。
でも心の何処かに彼の名は残っていた。

端的に言ってしまえばキスと同じ。あくまでも性癖の一つ。
ずっと続く顔のアップ。
話す言葉はとてもしっかりしているけれど、突然チョコレート、
等と気がそれたように表情が変わる。
それ以外の殆んどの表情は
まるでロキソニンで痛みを緩和させるように、何かの薬で、感情の起伏を押さえているようにみえる。
じっと観ていると、瞬きをしていない。
薬の服用には触れてないけれど……。

そして何より驚いたのが、弟さんの行為。
……
だから兄の面倒がみられるのか……。

白黒のフィルム、可愛い兄弟二人。
こんなに顔の似てない兄弟も珍しい。父似と母似に分かれたのか。
……何処にでもいそうな子どもなんだよね……

結果
観客は何も教えてもらえない。
画面から話し言葉から
自分なりに38年後を受け止める事しか出来ない。
故に、私が観た中で
一番ドキュメンタリーらしいドキュメンタリーだったような気がする。
人間、佐川一政とその弟をスクリーンで見せてもらった。
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