当たり前だけど、意志を持って観ないと観れない映画だ。
ピントをぼかした顔のズームが、数分続く。
ずっとこのままだったら、かなりしんどいなぁと思っていたら構図が少し変わる。
本、ビデオ、家族フィルム…
彼は今、何処に住んでいるのだろう…?
外国資本でなければ、たぶん制作出来なかったであろう作品。
私が佐川一政の名を知ったのは大学時代。
当時はかなりセンセーショナルな事件で、
ジャーナリズムは何故?を追及。
彼が小柄で仏で劣等感を抱いていた、などと書かれていた記憶あり。
その後「佐川くんからの手紙」という背表紙の本を図書館で見かけたけれど、読んではいなかった。
でも心の何処かに彼の名は残っていた。
端的に言ってしまえばキスと同じ。あくまでも性癖の一つ。
ずっと続く顔のアップ。
話す言葉はとてもしっかりしているけれど、突然チョコレート、
等と気がそれたように表情が変わる。
それ以外の殆んどの表情は
まるでロキソニンで痛みを緩和させるように、何かの薬で、感情の起伏を押さえているようにみえる。
じっと観ていると、瞬きをしていない。
薬の服用には触れてないけれど……。
そして何より驚いたのが、弟さんの行為。
……
だから兄の面倒がみられるのか……。
白黒のフィルム、可愛い兄弟二人。
こんなに顔の似てない兄弟も珍しい。父似と母似に分かれたのか。
……何処にでもいそうな子どもなんだよね……
結果
観客は何も教えてもらえない。
画面から話し言葉から
自分なりに38年後を受け止める事しか出来ない。
故に、私が観た中で
一番ドキュメンタリーらしいドキュメンタリーだったような気がする。
人間、佐川一政とその弟をスクリーンで見せてもらった。