すみ

転がるビー玉のすみのレビュー・感想・評価

転がるビー玉(2019年製作の映画)
3.5
何者かになりたくてもがく時期。
頑張ってもなかなか結果が出なくて、でも諦めることもできない。そのうち慣れが停滞させて、なあなあになる。まさに、どこにも行けない私たち。

ルームシェアって、辛い時に寄り添ってくれる擬似家族でもあるけど、同時に馴れ合いの場にもなってしまうなと思っていて、その両方がうまく表されているなと感じた。

吉川愛は実家が横浜にありそうなのにわざわざ家出てるってことは親が反対してるのかなとか、今泉佑唯は仕送りもらえてて比較的夢をゆっくり追えてそうで、だから(焦りつつも)少し精神的に余裕があるのかなとか、いろんなことを考えられた。

3人とも、目立った才能があるわけではなくて、劇中で成長していくわけでもない。才能があったり、努力家な一面が描かれているわけでもない。むしろ挫折しかけてるし、若さならではの甘えているところもあるし、辞めてしまっても頷ける。
それもまたリアルで、この3人が夢を諦めても、叶えても、どちらでも頷けるし、本当に若者の人生の儚い一部分を切り取っただけの作品なのだと感じた。
現実の東京(渋谷)の街にもこういう女の子がたくさんいるのだと思う。

ただ、劇中に出てきた、「諦める才能もなくて」は、夢を諦めてしまう人が多い中で1番大切な才能なのではないかな。

主演の3人は全員いい味出してたけど、特に萩原みのりの大雑把そうなのに人一倍繊細な演技がずば抜けてて、ずっと見入ってしまった。
きのこ帝国のボーカルソロの主題歌がぴったりで良かったな。
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