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五億円のじんせいのおっとのレビュー・感想・評価

五億円のじんせい(2019年製作の映画)
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あのシーンが良かったこのシーンが良かった!って後に語るんじゃなくて、映画全体がすごく良かったと素直に言える珍しい作品。
敢えて単調に緩急少なくストレートに作っているんだろうなと感じた。文化庁!!!って感じ(伝われ )

作品としては生と死や人間の価値そのものを切り取った重い話ではあるけど、それをポップに明るく描いている。
重く内に内に進む映画なら役作りもしやすいだろうけどそこを明るく描かなくてはならなくて、しかも役の本質を捉えないといけないものっっっっっっすごく難しい役を演じた望月歩くんすごい。
彼の演技っぽいけれど、真実っぽい、掴み所のない演技だからこそうまくハマった感じがする。たまに出てくる芝居感が不自然にハマってすごく気持ちいい。

脚本は都合合わせましたみたいなところが多くあるけどこの話が真実だったら、なんかこう、押しつぶされてしまうので程よくフィクション感あって良かった。


この映画を見た感想は人それぞれ違うだろうなと思う。
5億円集まっても死のうとした彼の気持ち、誰かの死のうえに自分が成り立ってしまっていることに気づいてしまったらそりゃ辛いよなと。
めちゃくちゃ単調に描かれた映画だけど、未来や結末が示されているのは死んだ人たちだけで生きている彼らには未来が描かれない。その脚本の作りがおもしろいなと思った。
あとお母さんがだんだん望来ちゃんってちゃん付けで呼ばなくなっていくところがすごく自然だった。
登場人物が多くて、劇中で掘り下げられない、描き切れないそれぞれの人生があるはずだけど「その瞬間」だけを描いて切り取ることによって素直に彼らの人生を受け止めることができたなと。
これもまた脚本のうまさだけど、役者それぞれの役への向き合いかたの丁寧さあってのことだと思う。

「優しい人と優しくない人がいるんじゃなくて、優しくしたくなる人とそうじゃない人がいる」という言葉が本当に印象的でした。
ただ望来くんみたいな旅の仕方は絶対オススメしない。
童貞って30万もするのか……
おっと

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