世の中には知らない事が沢山あるなと本作を観てつくづく感じた。
日本にいると第二次世界大戦の話はドイツ、アメリカに関わる話が殆どを占めていてあとにくるのはソ連、中国、韓国、イギリス、フランス、イタリアくらいだろう。
でも、スペインのそれもフランコ政権の反体制派勢力のそれも拘束され捕虜になった人達が経ていく過程は途轍もなく凄まじいものだった。
先ず彼等は国籍を奪われている。
その時点で彼等は何処の国の物でも無い只の人の形をしたナチスドイツの所有物でしかないのだ。
加えて彼等のいる場所は絶滅収容所以外では最も多くの犠牲や死亡者を出した収容所のひとつである、という事だ。(死の階段での行進、単なる動物としてしか扱われていない面も有り、狙撃の的扱いにされるシーンは戦慄)
そんな地獄の沙汰の中で写真家としての腕を買われ、カメラ好きの上官に従属する囚人こそ本作の主人公であるボシュである。
彼は日々レンズを通して目にする惨状が淘汰され兼ねない事実を目の当たりにし負の歴史を残す為に、撮影したネガを命懸けで守り、残す為に奔走するわけだが。
ストーリーは史実を基にしたフィクションとの事だが、随所で印象的なシーンや写真は実際に残された写真を忠実に再現されておりこれらはかなりの衝撃を纏っているがそれらを垣間見るだけでも一見の価値はある。
ドイツが追い込まれていく状況に於いても、各地の収容所では人体実験や虐殺などが絶えなかった。
人間は情報を取捨選択して、ともすれば誤ったものまで捨て兼ねない時代だ。
終戦からかなりの時を経て、あの時代の臭いや痛み、悲しみも風化が進み出している。
私の祖父は満州で生まれたらしいが、子供ながら終戦から帰国するまでだけでもソ連軍の侵攻が本当に目と鼻の先迄来ている状況の中で命を懸けなければ生存、帰国出来ないサバイバルを体験したらしい。
まさか自分の近親者にそんな話があった事すら知らなかったわけで、これも本人が実際に話してくれるまで知らなかったわけだ。
重くのしかかる真実を明かすことは非常にデリケートな問題だが今作を通して、身の回りにもしそういった実体験を持っている方がいれば双方勇気は要るが是非耳を傾けて欲しい。
現代を生きる私達には次世代に伝承する宿命があるのだ。
Netflixという媒体でしか見れないが、こういった事実があったって事を再認識するだけでも映画を通して貴重な経験が出来たと思う作品だ。