スチールラグ

テロルンとルンルンのスチールラグのレビュー・感想・評価

テロルンとルンルン(2018年製作の映画)
4.0
まずい、と思った。
「vapor」で、物語は始まる。
ずるい、と思ったと言った方がよいかもしれない。
一年以上聴いてきたこの曲から始まったことに。

心を閉ざした少女はしゃべらない。
頑ななその少女は窓が開くまで叩くことをやめない。
なんとなく志乃ちゃんを思い出す。

でも、その子は、そして彼は、心に、ガレージに閉じこもり、
決して開かない。
そして、そのオモチャはあまりに素朴で可愛らしいのに、
壊れてしまって、直すことすらできない。

「vapor」のあと、思いの他、物語は淡々と進む。
短く場面を刻み、時折、海辺の穏やかな風景を挟み込む。
全ては、ラストシーンのため。
監督自身が言っていたように、「最後からの逆算」。

長い下り坂の向こうに、のたりのたりと光る瀬戸内の海。
まぶしく穏やかな景色の中の、その結末をずっと待っていたんだと思う。
唯一の、少女の言葉を。

舞台挨拶付きでした。
正直、まだまだ工夫するところはあったんじゃないかとも思いました。
でも、一年待って、ようやくこの作品に出会えたことに感謝です。
スチールラグ

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