ザム

ブルータル・ジャスティスのザムのレビュー・感想・評価

ブルータル・ジャスティス(2018年製作の映画)
5.0
暴力刑事対犯罪者集団というこの世に何百本も存在するであろうテーマに人種や性の社会問題を包み、そこにザラー自身のユーモアを加えた従来のノワール映画とは一線を画す傑作。

まぁ他の作品がこのテーマで映画制作をすると確実に万人に受けるクライム・アクションとして世に出すだろうが、今作はその真逆で、長時間映画が嫌悪されるこの現代にアクション演出ではなく、会話劇(話運び)に重点を置いて制作した、という所に俺はまず惚れた。

勿論、三時間の上映時間をほぼ会話劇で進めるのは受け手として気が引けると思うが、ザラーの作る会話は本当に面白い。オフビートで劇伴もほぼないのにここまで没入させるのは間違いなく本人のユーモアセンスだと思う。そしてこの会話劇を楽しんでいる最中に来る突発的な暴力がこの映画に異常な緊張感を与えてくる。この"緩急"が本当にクセになるんだよな。

そして今作の主犯3人組がまぁ怖い。特に銀行強盗のシークエンスは全映画の中で一番だと思うし、この理不尽過ぎる暴力には弱肉強食と言った現代への皮肉も感じる。

そんでもって終盤の銃撃戦も全映画の中で一番。良い銃撃戦と聞くと『ヒート』の様なリアルな銃声を使ったコンパクトシューティングを連想すると思うが、今作の銃撃戦は現実に徹した間延び戦で、俺はこの乾いた殺し合いに衝撃を受けた。互いに一歩ずつ距離を詰め合い、ここでも会話劇を続け、間延びしながらも緊張感が漂ってる。これは何度観てもマジでアガる。

まぁ上記の通り万人受けはしないタイプの映画だけど、一見の価値はあると思うから色んな人に見て欲しいっすね。オールタイムベストです。
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