つのつの

ブルータル・ジャスティスのつのつののレビュー・感想・評価

ブルータル・ジャスティス(2018年製作の映画)
4.6
95%の可能性で今年ベスト1作品!!

「金に困った野郎どもが一世一代のヤマを踏むも想定外のトラブルに見舞われて自滅していく」という手垢のついたストーリーでありながら、はっきり「新しい」と感じることができたのがまず嬉しいです。突発的な暴力描写は北野武、ダラダラとした会話場面はタランティーノなどと見ている間に「○○ぽい」なと思った矢先に、そのどれとも違うテイストを放り込んでくるS・クレイグ・ザラーは、間違いなく新時代の映画作家なのではないでしょうか。その象徴とも言えるのがサントラです。往年の名曲をサンプリング的に使ったかと思いきや、ほぼ全て監督自らの手で作られた新作というサントラ一つとっても、並々ならぬフレッシュさに溢れています。
カーチェイスというより車を使った尾行場面や、闇雲なドンパチではなく遠距離の獲物を仕留めることに重きを置いたクライマックスの銃撃戦など、どこか鈍重な印象を受ける演出を見ていると、本作はアクション映画ではなく「人間ドラマ」だったのではと思えてきます。登場人物全ての細かな経歴を丹念に描きながら不気味なほどあっけない死際を見せる点に、死すらも会話や食事などと同じ人間の営みとして等価に描こうとする監督の狙いを感じました。
実際、クライマックスで横転するバンに襲撃をかけるメル・ギブソンの半端ないカッコ良さに代表されるように本作は役者の生き生きとした演技力こそが魅力に思えます。トリー・キトルズ、マイケル・ジェイ・ホワイト、ジェニファー・カーペンター、ヴィンス・ボーンによる少ない台詞の中に込められたニュアンスの一つ一つが大変味わい深く、あの景気の良いエンドロールには監督のサービスのように思えてとても嬉しい気持ちになります。
解釈したいモチーフなどもたくさんあるのですが、とにかく無類に面白く、しかも今まで見たことのないような空気感にあふれた傑作を放ってくれたザラー監督に感謝してます。面白かった!!!!
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