EDDIE

ブルータル・ジャスティスのEDDIEのレビュー・感想・評価

ブルータル・ジャスティス(2018年製作の映画)
4.4
老獪なメル・ギブソンの渋さとビンス・ボーンのシュールなやり取りが堪らない。人物の背景描写が丁寧で、テンポの悪さが逆に作品の重苦しさを上手く体現。人体損壊の暴力性は目を背けたくなるが、それ以上に巧みな心理戦に息を呑む。

すっごい面白かった〜。メル・ギブソン主演作品いつ以来の鑑賞だろうか。『サイン』とか『パトリオット』はうろ覚えだし、ホント『リーサル・ウェポン』(しかも1作目)ぐらいしかちゃんと観たことある作品ないかもしれない…。
そして、本作のメル・ギブソンめちゃくちゃカッコいいです。

最初は159分の長尺に尻込みもしたんですが、これは観てよかった!実際作品自体はとてもテンポが悪いんです。だから普通に長く感じます。だけどその長さすら必要条件に感じる丁寧な人物描写があり、とても見応えのある人間ドラマでした。
ギブソン演じる主人公ブレッド・リッジマンはかなり型破りな刑事。出世とは無縁にとにかく持ち前の正義感を武器に高い検挙率を誇る実力者。だけど政治的観念がないため、昇格・昇給はなく、不遇の数十年を過ごしていました。
20歳近く年下の相棒トニー・ルセラッティを演じるのはビンス・ボーン。コメディ俳優としても活躍する彼ですが、本作のような真面目な男臭いドラマも似合います。とはいえ本作でも少しばかりコメディ要素で本領を発揮。本当に2人の掛け合いが最高に面白いバディものです。

けど、基本9割ぐらいは硬派な人間ドラマ&バイオレンスアクション。アクションとはいっても派手な演出はあまりありません。ただ銃撃戦をはじめとして各キャラクター同士の心理戦が緊迫感漂っていて、常にハラハラドキドキ。ド派手アクションでスッキリ爽快というのではなく、ブレッドの常に状況を分析しながら行動、指示を出すところなどとても見応えがあります。

また前述の2人の他に、ヘンリー(トリー・キトルズ)&ビスケット(マイケル・ジェイ・ホワイト)のコンビ、銀行強盗に襲われる銀行員の1人ケリー・サマー(ジェニファー・カーペンター)、そして強盗グループと様々なキャラクターが登場します。
主人公2人以外のキャラの人物描写が丁寧で、159分の尺はまさにこのために用意されたものと言われたら納得ですね。
ケリーなんかとある理由により職場に行きたくないとゴネているわけですが、そこから彼女が職場の銀行に行くまでの過程を見ていたからこそ、その後の展開があまりにも辛く心に突き刺さりました。

ヘンリーについては家族の存在が丁寧に描かれていましたし、ビスケットとのコンビ愛も劇中のやり取りでひしひしと伝わってきていました。

個人的にお気に入りのシーンは、ブレッドとトニーが車中で張り込みしている際のトニーの食事シーン。なんだか無駄に長く見せるなと思いきや、その後のオチが…ちょっと笑う時声出てしまいました。

ちなみに本作は、第40回ゴールデンラズベリー賞で「人命と公共財を軽視する無謀さに対する最低賞」にノミネートされたそうで、確かに人命は悉く軽く散っていったし、めちゃくちゃグロい演出もあったし、公共財も確かに物凄く壊れる。そこについては納得のラズベリー賞ですが、作品自体は私は間違いなく面白いと言えます。

理想と現実のギャップ。どんなに正義感強く弱者のために行動したとしても、政治的に上手く立ち回れなければ出世街道からは外されてしまう。なんだか現実の物凄く厳しい部分を見せられているようで、なんだかフィクションなのにブレッドの立場が他人事には思えませんでした。
『トマホーク』や『デンジャラスプリズン』などのB級映画で人気を馳せるS・クレイグ・ザラー監督。彼だからこそこの容赦ないバイオレンス描写を見せることができたのでしょう。残酷描写平気な方には是非とも観ていただきたい作品です。

※2020年劇場鑑賞113本目
EDDIE

EDDIE