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浅田家!のtamashiiのレビュー・感想・評価

浅田家!(2020年製作の映画)
4.2
平日の劇場で鑑賞。思ったより人が入っていてびっくり。あまり邦画にはないような、虚実入り混じりでなかなか味のある映画。

人を撮った写真には目を逸らしたくなるようなイタさがあると思っている。自分の姿を見るのが嫌、それを記録に残すのも嫌、という感覚。特に、家族写真が嫌いだ。撮る前の人工的なやりとりが嫌いだし、撮った後のなんとも言えない空気も嫌だし、写真を見て思い出に浸るなんてのも嘘くさい。

そういうイタさについて、家族写真を専門にする写真家がどう考えることになるのか。

本作でその内面が詳しく描かれるというわけではないが、この映画を見ると、ある種の追体験のような感覚が味わえる。家族写真を撮ることのイタさが、それはそれでアリなのだと思わせる文脈のようなものがあって、それを捉えるために撮る側の心構えも必要になる。写真撮影はある種の儀式だ。そして、家族写真は、映っているもの自体が大事なのではなく、その写真と結びついた人たちの思い出の媒介になるから重要なのだ。よい家族写真であるためには、写真を撮るまでの過程や人物の背景が必要なのだ。

実は浅田さんには薄い縁があって、少し親近感があった。被災地のエピソードがどこまで本当か、ということは気にならなくはないけれど、被災地で浅田さんのかんじたであろうことは、この短い映画では語り尽くせないものだったと思う。

タイミング的に、今震災の映画を見るというのは趣深い。震災の余韻がまだ残る時期なら、売名的なニュアンスが色濃く出てしまっただろう。だが、この十年の経過は本当に早かった。誰が今のような世の中を予想できただろうか。家族の絆や、人と人との絆というテーマがこんなに貴重に思える今こそ、見るべき映画だと思う。
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