EDDIE

酔うと化け物になる父がつらいのEDDIEのレビュー・感想・評価

4.1
コアラのマーチの親子のように寄り添い合うにはどうすれば良かったのだろう。POPな序盤からは想像を絶するほどの親子の苦しみを痛感。飲んだくれの父の意思の弱さが家族にも伝播。カレンダーのメッセージに涙が堪えられなかった。

この映画は作品をどういう見方するかで評価が変わりそう。私は少なくとも素晴らしい作品だと感じました(なんだか少数派っぽいけど、自分の感情に素直にいきます)。

まず大前提として、酒に溺れる父親をテーマに家族の崩壊とわずかな希望を見出す作品だと感じました。

私も自分の父の姿を重ねずにはいられなかったんですが、私は父を高校2年の時に亡くしています。心筋梗塞でしたが、ほぼ休肝日なんてないぐらい毎日飲むし、タバコも吸う父でしたから、原因はおそらく飲酒や喫煙だったと思います。
今父が亡くなってから10年以上経過していますが、大人になりいい中年になった自分はふと思うんです。父親と酒を飲み交わしたかったなぁとか、父の好きな映画を一緒に観に行けたらよかったなぁとか。
ただ時すでに遅しで、不摂生をもっと控えるように訴えることもできただろうし、そんな結末を知っていれば何かしら対策もできたと思います。

だけど、本作ではこの田所一家は父の酒癖の悪さを放っておいたせいで崩壊の一途を辿ることになります。
なにせ松本穂香演じるサキはどうしようもなくなった父の姿を見て、無関心を決め込むようになります。こうなってしまったが最後。その後、父が病気になっても心は閉じたまま、父を恨む気持ちばかりが先行。
物語の結末でサキはとあるメッセージを見つけ涙します。もはや父が亡くなったことをそのメッセージを受け取ってから悔やんでも遅いのです。

本作の一番肝となるシーンって個人的にはサキが病院の待合室で恒松祐里演じる親友のジュンとの会話にあると思っています。
様々な物事に無関心になり、自分が悪いと自責の念にばかり駆られたサキが救われた瞬間。そして、これが我々に伝えたかったメッセージなんじゃないかと。

おそらく本作では田所一家の崩壊をモデルケースとして同じ轍を踏まないように、家族でコミュニケーションをとって、きちんと悩みを大切な人にも打ち明けていこうってことを伝えたかったのかなと。

だから渋川清彦演じる父トシフミが悪かったのでもなく、もちろんサキが悪かったのでもありません。誰かの責任にするのは簡単です。誰かのせいにする前に、まずは話をしようよと。
そう考えると私も父とのコミュニケーションが足りなかったこともあるのかなと。
だけど、今自分は生きている。この作品を教訓に、身近な人が酒に溺れていたり、苦しんでいたら手を差し伸べられる自分でいたいな。

それにしても父トシフミの飲み仲間は揃ってクズ野郎ばっかりだ。そちらの方にばかり苛立ちを感じました。

※2020年劇場鑑賞52本目
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