kakaka

ラストナイト・イン・ソーホーのkakakaのレビュー・感想・評価

3.7
ホラー作品では、「夢の中で殺される」というプロットは珍しく無いものの、本作のように「夢の中で夢が殺される」というのは案外新鮮に楽しめた。
主人公エロイーズが憧れ、インスパイア元にする60年代ロンドンのネオンに輝くグラマラスなファッション、そしてショービジネスの象徴として顕現するサンディの幻は彼女を高揚させるが、徐々にその強烈なハイライトの影に潜む濃い闇に心を蝕まれる。
つまり単純にオールディーズとしてファッション感覚で消費するだけでは許さず、その影にあった女性達への性搾取をホラーという切口で告発して見せている。
が、これがまたエドガー・ライト作品だけに音楽とテンポの良い編集であくまでエンタメ作品としての味付けになっているのだが、エロイーズを甲斐甲斐しく助けてくれるジョン君が、あれだけひどい目に合い、あまつさえ腹に穴開いても、満面の笑みでエロイーズの活躍を喜べる彼が一番ホラーな奴でした。
またロンドンのソーホーに、顔の無い男達という組み合わせはやはり、フランシス・ベーコンの絵画を思わずにはいられなかった。
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