作品テーマの内に性的対象化に対するアンチが込められているのは明白か。
ともすれば胸糞悪くなりそうなテーマをサスペンスホラーの作風でカムフラージュしていたが、難しい部分も多かったようだ。
主人公が夜な夜なサンディの人生を傍らで見つめながら、サンディと自身を同一化し60年代の美しい衣装と共にインスピレーションを与えられてゆく過程は面白い。
主人公が60年代愛好家という設定が効いていて音楽と共に楽しめた。
後に、サンディが夢破れ望まぬ職業に身を落とすと共に、主人公の精神もサンディを性的対象化していた男達の幻影に脅かされてゆく。
ここで違和感があった。
主人公の怖れの原因が男達の幻影なのか、サンディの死なのか、サンディと自身の同一化の崩壊なのか、または別にあるのか分かり難かった。
そしてラスト、サンディの真実を知らされると共に迫って来るおばあちゃん。
階段のシーン迫力と共に絵的な美しさがあり良かった。あそこだけまた観たいな。
主人公も危機を乗り越えて強くなり、鏡の中の母ちゃんもニッコリ。
これからロンドンでもやっていけそうです!おしまい。
ん?
母ちゃんいるか?同級のイジメっ子いるか?元警官のバイト先の店長いるか?車に惹かれたじいちゃんいるか?黒人の男の子いるか?
登場人物が駒として配置されてる感が多分にあり、メインストーリーに絡みそうで絡んで来ない。
下手すると、「60年代に夢破れた女性が起こした事件をたまたま霊能力で追体験した女の子」という話で終わりかねない作りになってしまっている。
もしくはそういう狙いなのか。
登場する男性を意識的に無能として描くのは良いが、亡霊の男達の顔を出したり、黒人の子が優しかったり、なんかテーマがぼやける印象もあった。
こういうテーマでいえば、ヴァーホーヴェンの「ELLE」の様な人間臭さが個人的には好みではあった。