ミステリーとしてちゃんと面白いし、なにより規模感がちょうどよくて、定期的に新作を観たくなるシリーズになった。
事件の解決パートは思ったよりもあっさりと進んでいくが、そこまでの舞台設計にじっくりと時間をかけているのは素晴らしい。
それによって今作のテーマである“愛”の表裏がはっきりと見えるようになっている。
恋愛に限らず、家族愛だったり友愛だったりなど、多様な“愛”の形をすごく自然に見せているのも素晴らしい。
ここが押し付けがましくないから、愛を“喪失”したポアロと、船の乗船者たちとの比較が際立つしラストのポアロの表情にものすごい深みが生まれている。
表情で言うと、とある場面のある人物の表情の意味がラストでわかったときに切なさと気持ちよさが同時に来る良い体験をした。しかもこれも反復しないし、さらっとやってるから良いんだよね。