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ミッドサマーのSNGのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

<カルト宗教に感じる恐怖>というかんじで、ホラー映画として見るのであれば評価は低い気がしました。
主人公の彼氏がその友人の故郷で行われる夏至祭に招待されるも、それは実はカルト宗教組織で行われる儀式への供物としてでした、みたいな内容。
殺されるだろうなと予測できるところで人が殺されるので、安心してみていられた為ホラー映画と言われるとうーん????というイメージ。
ただ、ストーリーはとても良くできているし、考察しようと思えばいくらでもできちゃうところがすごい。
主人公は家族関係や精神に問題を抱えていて、夏至祭へ訪れる前年に無理心中で両親と妹を亡くしている。彼氏と心の距離も感じる中で、血の繋がりではなく集団としての繋がりを家族とする宗教組織へと迎え入れられるさまがものすごく自然に描かれている。
ホルガ村では新しい血を迎え入れていかなければ近親相姦続きとなってしまうから、夏至祭への観光という名目で外部へ旅する村人達がきっと毎年幾人かつれてきているのだろうな。そのうちの幾人かが村の家族となり子を成し、そのうちの幾人かが生贄になる。
90年に一度と言われているけれど、これまでのメイクィーンの写真やペレの両親が火事で亡くなったとのくだりから、毎年のようにおこなっているものなんじゃないかなと思う。さらに言えば、90年引き続いていたにしては歴代メイクィーンの写真が足りない気もするので、割と浅い歴史のカルトなのかな、などと予測。
民俗学的な怖い話が好きなので、ミッドサマーも楽しく視聴した。
殺されるだろうなと思う場面で殺されるだろうなと思う人が殺されるので、恐怖心はないんだけど、殺され方やら儀式やらがひたすらに気持ち悪い。
村人達は依存しあって人類補完計画じゃないけど、自他の区切りが曖昧になるのか、共鳴しあうことで一層繋がりを深くしている。
一人が叫べば周囲の人々も叫び、悲しめば悲しみ、快感を得れば共に快感を得る。
そんな状態で洗脳された人間でも、死の間際に痛みや恐怖によって正気を取り戻す様も描かれていて、後味はとてつもなく悪い。
後味はとてつもなく悪いんだけど、映像はとても美しくておどろおどろしくなく、それがまた怖いというか、薄気味悪くて面白いなと思った。
おどろおどろしかったら人は警戒するもんね。とんでもなく美しく素晴らしいお祭りが行われる予感を溢れさせる村だからこそ、人は警戒を解いて中へ入っていっちゃうんだろうなぁ。
村の家族の一人となった主人公はずっと家族のことで苦悩していたからようやくその苦しみから解放されてラストに笑顔を見せるんだけど、彼女の行く末を考えると後味の悪さもひとしお。
でもまぁ幸せなんでしょうね。主人公は。自己を保つことで苦しみを独り抱えていたのが、ホルガ村の一部となることで解放されたんだから。
映画を見終わった後、ホルガ村はナチスが基盤としていた優生思想に基づいているとの考察を読み、なるほどと納得。
この村では障害児は敬われていたけれど、障害を持つ無垢なる子供を生み出すためにわざわざ近親相姦で子を成したりしている。
また、ホルガ村に残っている人々はほとんどが金髪碧眼に白い肌。ホルガ村の一員として迎え入れられた主人公もまたその基準に則している。
殺害された外部の人たちは有色人種であったり、神聖なる先祖の木に立ちションをした罪はあれどマークも深い髪色をしていたなと思う。
年齢の季節を終えた老人はともかくとして、三角小屋の神殿で贄となったホルガ村の人たちはどうだったかな、など、もう一度見返したい気持ちも出てくるし、なんならディレクターズエディションを見たいという気持ちもあるんだけど、この映画のすごいところは、見終わってからじわじわと嫌悪感が募るところ……。
特にクリスチャンがマヤとセックスの儀式を行ってるところとマークの血のワシ。
ご遺体とかは完全に人形やろがいみたいな作りではあるんだけど、本当に気持ち悪くて見た当初より段々補完されちゃうのか、見終わってしばらくしてからのダメージの方が高い感じな気がした。
マヤとのセックス儀式も周囲の女達の共鳴によって、お前よくその状況で致せるなってぐらいには気持ち悪いし、考えてみれば恋のおまじないとしても食べ物に陰毛混ざってたのも本当に気持ち悪いなと思った。
正直、ミートパイまさかあのじいさんとばあさんの挽肉で……!?と思ったけど、そうではなかったらしく、そこはよかった。
しかし気持ち悪さの宝石箱みたいな描写、よくまぁこんなに思いつくなと感心してしまう。
熊に包まれるところは金カムで慣れていたので平気だった。金カムありがとう。
儀式の描写もそれぞれにこまかいんだけど、そこに粗があったとしてもそれはホルガ村の浅さの表現となるため、すごいなぁと思う。
一人の女性がカルトに染まっていく様と、異質さ。正気と狂気でせめぎあって、幸福そうな笑顔を見せるラスト。
じわじわと記憶が保管されて嫌悪感を増幅させていく儀式の描写。
あの村を訪れて正気を保ったまま生きていられる人は結局あの障害をもった子供のみってところといい、なんかもう、すごいなと思いました。突き抜けたいい映画だった。
二度と見たくない気持ちとまた見たい気持ちがある。今はまだ見たくないですね。
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