ざか

ミッドサマーのざかのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.1
この映画が好きな人はこのレビューは見ないことを勧めます。

正直な感想は「なにこれ?」です。
ジャンルがホラーな事と異常な村が舞台という情報、あと評価されているということで期待して見ましたが、良さが分かりませんでした。

まず村人が基本嘘つきでしかないのが全くストーリーにのめり込めない要因でした。
「あいつどこ行った?」
「彼なら先に帰ったよ」←嘘
の嘘をつく意味が分かりません。

村人は自分たちの行いに対して絶対的な信頼を寄せ、善い行いだと信じている筈です。それを偽る時点で、ただ人を騙して殺したいだけに思えてきます。
それならそれでホラーを楽しめるのですが、結局そういう訳でもない。

「あいつどこ行った?」
「彼は贖罪の旅に出たよ。仕方ないよね、あんな事したんだから。でもこれで許されるから彼も幸せだよ」
(私の例のチープさは抜きにして)みたいな流れなら理解できない価値観に拒否感を覚える楽しみ方ができますが、普通に嘘ついてると何を伝えたいのか分からなくなります。

綺麗で明るいホラーがテーマというのを後から拝見しましたが、そもそものホラー要素に軸が無く、明るさも薬物による症状一辺倒で、かつ長さは2時間以上とくれば「なにこれ?」としか言いようがありません。

幽霊や超常現象ではない人の怖さを伝えたいのなら、じゃあ何故その人がそういう行いをするのかという土台がしっかり出来ていないと怖さになりません。恐怖より先に何で?と疑問が浮かびます。
なんか謎の昔からの風習です、薬物でラリった人達なんです、って理由が易すぎる。

明るいホラーという新ジャンルの開拓という点では評価されるのかもしれませんが、純粋に映画単体の面白さを考えたら良くはなかったです。

〜以下、追記〜

納得がいかなかったので再考。
村側視点に立って考えてみる。

彼らの目的は祝祭を行う事に加えて、ファミリーを増やす事が考えられる。
ファミリーを増やすにはクリスチャンにした様に村人と子を成すのもあるが、外部からこの村に適合する他人を直接加えるのも方法の一つと言える。

そうなると彼らが嘘をついて順番に間引いていったことにも割と理由がつく。
ただ殺したいだけなら一気に皆殺しにすればいい。
そうではなく目的は新しいファミリーを見つけることとなれば、嘘で隠し少しずつ真相を明かしていき、誘われた部外者がどれだけ村に合致するかを測っていく必要がある。
御神木に悪さをしたり盗みを働いたり、また祝祭に大きな拒否反応を示す者は適合無しとみて生贄に使えば良し、それらを乗り越え認められる者ならば、最後は祝祭にも積極的に参加させ新しくファミリーへと加わえる。

つまり唯一認められたダニ側視点で話を辿ると、家族に先立たれ情緒不安定かつ彼氏にも真摯に受け止めて貰えず不満を募らせていた状況から、自分を受け入れてくれ自分も受け入れられる家族を見つけた救済のストーリーに。
村側視点においても、生と死の循環に於いて新たな子とダニを迎えることができた祝祭成功のストーリーとなる。

そして生贄だけでなく村に新たなメンバーを2人増やしたペレは最大の功労者と言える。
ペレがダニにフォーカスしていたのは、初めは恋心にも見えるが、村人たり得る素質を見ていたのが分かる。

これらを総合すると、それぞれの思惑を異質な宗教観の元、各々が目的を達する形で着地した本作は優秀と言えるのかもしれない。
何より「なにこれ?」と思ったものを後からここまで考えさせる不思議な魅力はあった。
ざか

ざか