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ミッドサマーのツのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.5

【色鮮やかな狂気の夏至祭】


『へレディタリー』がここ数年稀にみる傑作だったので、同じ監督の新作が公開される!と聞いた時から、それはもう期待しかなかった。

前作同様独特なカメラワークが健在でめちゃくちゃニヤッと来るシーンが多数あった。
車道が逆様になるシーンとか、異世界へのワープ感すらして、これを思いついた監督は天才だなと改めて思った。

家族を亡くしたトラウマを少しでも忘れるようにと訪れた一見「天国」のような場所が、実は決して知られてはいけない、恐るべし仕来りや伝統を秘める場所だった。

フローレンス・ピューの演技力が説得力があって、だんだんと何かの領域に達していく過程がとても素敵だった。

『へレディタリー』同様、ショッキングなシーンは序盤にいくつもあったが、後半は割と色々と割愛されていた印象を受けて、何だか物足りなさを感じた。
個人的に前作の方が想像を絶する衝撃の数々とそれに負けない強力な脚本を持ち合わせた完璧な作品だと強く印象に残っていたので、今作はそれを超えられなかったなと。

それでもアスター監督の「らしさ」がちゃんと出ていて、『へレディタリー』と似たようで全く違うテーマを作品にしたのは◎。

連休だったせいか、どの劇場もほとんどの回が満席だったがかなり好き嫌いが別れ、観る人を選ぶ作品だと思う。
前作より衝撃が少ないのと、アブストラクトな内容を結構扱っているので、集中が途切れるとついていけなくなって、楽しめない人も絶対にいる気がした。

悪いのはどっち?と聞かれたら自分としては、キャラクターたちは自らの意志で【其処】に向かい、共同体の様々な秘密や儀式の恐ろしさを知りながらも、それらを裸足で踏み荒らしたが故に起きた結果だと思う。

だからこそ、ラストシーンはとても好きな感じだった。


鮮やかなで、色とりどりな、大変美しい作品だと思った。
あと日本版のポスター格好いい!めっちゃセンス感じる!


監督はホラーはもう撮りたくないと言っていると聞いたが、唯一無二な完成の持ち主だと思うのでいつかまたその気になれた時に、次どんな悪夢を魅せてくれるのか、今から既に楽しみで仕方がない。
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