みおこし

ミッドサマーのみおこしのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.7
「いったい私は何を観てるんだ」状態の約3時間でしたが、全く冗長なところもなくあれよあれよと言う間に怒涛のクライマックスを迎え、半ば放心状態で劇場を後にしました。去年『サスペリア』のリメイクを観た時もおったまげ状態でしたが(笑)それを遥かに超える脅威の映像体験...。ものすごい映画を観てしまった...。

スウェーデンの奥地で90年に1度だけ行われる祝祭に招かれた大学生グループが、現地のしきたりに触れるうちに想像を絶する経験をする...というのが簡単なあらすじですが、あれよあれよと言う間に怒涛の展開を迎え、ラストはもうとにかくカオス。脳内での情報処理が追いつかず、エンドロールは放心状態でした。

とにかく背筋も凍る衝撃的な描写の連続なのに、目の覚めるような映像の明るさと美しさ。「ホラー映画は暗く、おどろおどろしく、そして色彩感に欠ける」という定説を根底から覆しています。なのにこんなにも恐ろしい映像体験は初めて...!
しかし、かと言って"ホラー映画"とジャンルを括るのも難しい作品で、恋愛映画としての側面も孕んでいたり、そもそも人間の深層心理に深く切り込んでいくサイコスリラーとしての側面も強かったりと、いかようにでも分類できる点もまた斬新。

予告編などで"狂気の世界"と表現されることが多い世界観ですが、本作に出てくる架空の民族は私たちの常識においては到底理解できない伝統でも、逆に彼らから見たら私たちの常識が狂ってるのかもしれない...と考えさせられてしまいました。見終わる頃には、彼らの死生観も一概には否定できなくて、むしろこれこそが究極の"再生"なのでは?なんてしみじみ。
長らく孤独や閉塞感と格闘してきた主人公のダニーにとっても、現実世界よりこの狭い空間の中にとどまることのほうが真の幸せなんじゃないかとさえ思えてきたり。
まさかこんな恐ろしい映画で、文化や価値観の多様性みたいなテーマを熟考する機会をもらえるとは...!(笑)アリ・アスター監督恐るべし過ぎます。

花々の美しさや北欧らしい淡い色合いの建物など、視界に飛び込むさまざまな事象が目に焼き付いてかえってトラウマになったし、犠牲になる人々を殺害する当事者たちには罪の意識どころか救済の意識しかないことも怖すぎるし...掘り下げれば掘り下げるほどゾッとします。画角、距離感、影の使い方などなど、細かい部分まで徹底的にこだわり尽くされた圧倒的な映像美など、注目すべき点をあげたら枚挙に暇なし。でももう二度と観たくない!!(爆笑)そしてエログロ描写も、一体どうやったらあんなビジュアルが想像つくのか...。
いろんな方の考察を読んで、諸々振り返っている今日この頃。

『シング・ストリート』から気になっていたジャック・レイナーの熱演に圧倒されると同時に、ファンからすると目も当てられないシーンが続いて泣きそうになりました(笑)。フローレンス・ピューの特徴あるハスキーボイスの泣き声が耳から離れない...。
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