飴

ミッドサマーの飴のレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
4.2
一言で言って、「気持ち悪い」映画だった。
開始10分、あまりの不気味さに心がざわついて、今すぐ席を立って映画館を飛び出したくなったのは生まれて初めての感覚だった。テレビで見ていたら見るのをやめていたと思う。
見終わった後、汗が額に滲んでいて、席からしばらく立てず、気分が悪かった。それは恐らく、グロテスクな描写のせいというより、作品全体の薄気味悪さと恐怖に体調が悪くなってしまったのだ。

不協和音のようなBGM、ふと違和感を感じさせるようなカットが、陽気な映像と対比されて作品全体に漂う気味悪さをより一層引き立てていた。

内容面では、主人公の心の不安定さや周りの人間の冷たさ、ぎこちない人間関係がリアルで、それもまた舞台の現実離れした雰囲気と乖離していて気持ち悪かった。しかし、その気持ち悪さ・不快感が作品を通して一貫していて、映画として統一感を感じた。

感想はこのくらいとして、評価についての話をする。
私はテーマが首尾一貫した作品が好きなので、「気味悪さ」が微塵もぶれなかった点はとても評価できる。また、何度も言う通り、色とりどりの花や白い民族衣装と、作品を覆う不気味さや鮮血のコントラストが非常に印象深く、恐怖を増幅させた。主人公の表情や話し方も、主人公の心情や人間味が感じられてとても良かった。BGMの奇妙な音も、カットも、何もかもの要素が完璧だった。
唯一気になったのは、ネタバレになるので控えるが、時々美術のアラが見られたところだ。突然現実に引き戻されてしまって良くなかった。

面白かったかと言われても答えづらく、人にも勧めづらいが、間違いなくクオリティの高い映画だった。もう一度見に行きたいかと言われると躊躇ってしまうが。
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