不協和音、天地逆さまなどのカメラワーク、花や食べ物などのなんとも言えない脈動、色彩は美しいけど人為的に画一化されたような気持ち悪さ、あらゆる要素でこちらの神経を逆撫でしてくるし、とにかく常に不穏。特にダニーの呼吸音が聞いててつられて苦しくなる。
前作ヘレディタリーの悪魔とかの怖さではなく、誰かの感情に同じ経験をしてない人たちが共感し、あたかも経験したかのように感情を発露させる様、考え方が同じ方向性しかないコミュニティだからこそのある意味完成された閉じた世界(彼らは変わることなくこれらの儀式を意味あるものとして続けるんだろうな...)という、とにかく理解できないものへの怖さ、人間の怖さだった。
すべてに伏線があり正直1回じゃ追えない。見るたびに新たな発見がありそう。
普段から抗不安薬を服用している上に、家族の心中、上手くいかない恋愛関係など、居場所を失い、心の拠り所がなくとにかく辛いことが多いダニーにとって、自分と一心同体のようなホルガは救いであり、新たな家族となる場所だったんだと思う。
恋人であるクリスチャンのセックスシーンはダニーのアメリカでの居場所を完全になくす最後の儀式だった。そこから生け贄の話にすぐ進み、そりゃ傷心したダニーはそういう選択肢するだろうし、それもホルガの人たちは計算ずくなんだろうな、と思った。最初からダニーは女王として連れてこられたんだと思った。
依存体質で他者との境界が曖昧な人にとってホルガは救いなのかなとちょっと後日思った
