南

バスケットボール・ダイアリーズの南のレビュー・感想・評価

3.6
悪ガキながらも大好きなバスケには一途に打ち込む4人の少年たち。

第一幕だけ観れば、『ヤング・ゼネレーション』などを思わせる爽やかなスポ根青春物語だ。

しかし中盤、4人で川に飛び込むあたりから不穏な空気が漂い始める。

高いところから低いところへ真っ逆さまに飛び降りるという、これまた『ヤング・ゼネレーション』ライクなこのシーン。

悪さしながらもスポーツにはげむ健全な少年像を扱った第一幕から、ヘロインに溺れ人生を台無しにする第二幕への切り替えスイッチというのが、このシーンに込められた意味だ。

さらに親友の死をターニングポイントとして、どんどんヘロイン地獄へ転落していくジム達。

このシーケンスで強調されるのは夜、雨、黒い服。今後の人生崩壊を強く暗示する演出だ。

後半はヘロインを手に入れるため悪行の限りを尽くすジャンキー達の描写が続く。

ひったくり。
車ドロボー。
売人との追いかけっこ。
深夜の店舗強盗。

などなど。
深い闇と、暗く青い照明、スモークがバロック的、ノワール的なムードを盛り立てる。

そしてラスト近くでジムが建物から警官に引きずり出されるシーンのカメラワークだが、これは冒頭で学校から出てくる4人のシーンと共通しており、前半と後半の落差を強調する効果を生んでいる。

麻薬中毒の悲惨さを扱った映画としては、本作の翌年公開で享楽的な『トレインスポッティング』などよりは、『ドラッグストアカウボーイ』や『レクイエム・フォー・ドリーム』が近い。

ただこの作品の場合、ドラッグに加えバスケというクリーンで清潔な対立軸が用意されているぶん、ストーリーの説得力がより引き立つ作りになっている。

テーマ(この作品ではドラッグ)を"暗"として戒めるためには、こういう対立する"明"のテーマが不可欠だ。

『ディアハンター』の序盤40分、幸福な青春時代を冗長にさえ思える尺で見せた後に、いきなりベトナムの戦闘シーンに移るのも同じ効果。

スコセッシ的な主人公によるナレーション、第四の壁の破壊、ヤク中のディカプー、更生後の講演会で締めくくられるラストシーンなどは『ウルフ・オブ・ウォールストリート』などにも通じる部分。
南