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82年生まれ、キム・ジヨンのtoyocaのレビュー・感想・評価

82年生まれ、キム・ジヨン(2019年製作の映画)
4.0
原作を読んでいたので、とても期待していた。原作の大きなモヤモヤ爆弾を投げつけられて、大きなショックを受け大号泣してしまったオチから、随分とマイルドに希望を持たせるラストにはなっているけれど、問題提起には十分の鋭さを保っていたように思う。それは、一緒に隣で観ていた夫の涙にも現れていた。私たち夫婦には子どももいないし夫はかなり平等な人物なので不要とは思いつつ、一緒に観てほしい作品だと思っていたので、キチンとメッセージを受け取っていた事に嬉しく思った。

帰り道、随分と内容について語ったけれど、ふとした不安に襲われた。分かりやすく提示されたものに対して問題意識は持てるけれど、はたして普段に潜む差別にはうまく気付けるのか?と。原作のカウンセリング医師のように、患者と現実の妻の苦しみを同等のものと扱わなかったように、自分もどこかでダブルスタンダードをしているのではないか、と。

最近夫と「トマソン」探しにハマっている。「トマソン」とは建物に残された、すでに無用なのに存在意義があるように残り続ける扉や階段の事をいうのだけど、差別とはトマソンのようだと、ふと考えてしまった。いつもの通勤路に、近所に、明らかに不自然に存在した、二階の壁の取手付きの扉。開けて一歩踏み出すと転落してしまう、ベランダもない開かずの扉。そんなに不自然なのに、見つける為の意識を向けないと、見つからない。馴染み過ぎて見えないし、違和感すら感じさせない。まずは意識を変えて、あぶり出す必要があるのだ。違和感を違和感と見つけることのできる目を作ることが、まずは大事なんだと感じた。
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