カフェオレ

フェアウェルのカフェオレのレビュー・感想・評価

フェアウェル(2019年製作の映画)
4.2
公開が半年延期されていたけどやっと観ることができた。

祖母が癌であることを本人に伝えず、従兄弟の結婚式という嘘の口実を作り祖母に会いに行く家族親戚と、本人に伝えたいけど伝えられない主人公ビリーの物語。

個人的な話になってしまうけど、私も祖母を癌で亡くしたが、本作とは逆に祖母は自身が癌であることをわかっていたけど私にはなかなか伝えてくれなかったし、かなり衰弱してからも「いつか治ったらまた遊んでね」とまだ私に自分が癌であることが隠し通せているかのように振る舞っていた。他にもビリーが私と同い年なことなど、完全にではないけどシチュエーションが少し似ていてビリーに感情移入せざるを得なかった。

人間いつかは死ぬのだけど、死期が迫っている大事な人を見ているだけの状況はとても辛い。

劇中ずっと祖母ナイナイに癌であることを伝える伝えないをやっているけど、その中で東洋と西洋の死に対する捉え方の違いや中国文化の面白さがふんだんに描かれていた。
中国では癌は本人に伝えず、代わりに周囲の人がその苦しみを背負うという風習があるみたいだけど、代々それをやっていたら普通に癌であることを悟ってしまう人もいそうだしその風習は破綻しているんじゃないかとも思ってしまったけどこの考え方は野暮かもしれない。
思い出してみると、本編一番最初のシーン、ビリーとナイナイが電話をしていて、ナイナイはビリーに病院にいることを隠して嘘をつくが、ナイナイ自身、確信はしていないにしろなんとなく癌を悟っていてそう言ったのかと思ったけどどうだろう。

ルル・ワン監督の実体験に基づいた話なのでオチというと語弊があるかもしれないけど、ラストも優しくユーモア溢れる終わり方で、誰も傷付かない素敵な作品だと思った。

完全に余談だけど、ビリーが"Killing Me Softly with His Song"を歌うシーンに上がる。