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ラストブラックマン・イン・サンフランシスコのShinMakitaのレビュー・感想・評価

2.2
サンフランシスコ。ベイエリアのフィルモア地区は、ヴィクトリア調住宅が並ぶ坂道のある場所。富裕層しか住めないこの地区のある一軒に、2人の貧しい黒人ジミーとモントがやってくる。実はこの家、ずっと昔にジミーの一家が祖父の代から住んでいた家。90年代に父が手放して以来、ジミーはこの家に執着していた。なにせジミーにとって、第2次大戦直後にジミーの祖父が自らの手で建てた思い出の生家だったからである。家には白人の老夫婦が住んでいたが、彼らの留守を見計らってはしばしば家の敷地に侵入し、壁の塗り替えや庭の草取りを勝手に行っていたジミー。他人が住んでいても、外観が汚れることに我慢ならなかったのだ。モントはジミーの親友で、彼の「手入れ」を見張る役。時々老夫婦にバレて怒られるが、警察沙汰にはなっていない。
ある日、その老夫婦が相続のトラブルから家を退去することになった。空き家になることを知ったジミーとモントは、喜び勇んで家に入り込み、不法占拠を決め込んでしまう。叔母が保管していた祖父の家財を回収し、家の中に配置してリフォームを開始するジミー。それを手伝いながら趣味の戯曲を書いていくモント。しかし、2人の楽しい同居生活は長くは続かず…


「ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ」

以下、ラストネタバレマン・イン・サンフランシスコ

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映画本編前に知っておいた方がいいのは、サンフランシスコの住宅事情。映画でお馴染みの、坂道が急で斜めな家が並び、ゴールデンゲートを臨めるあの地域…一軒買うなら、最低100万だそうです。円じゃないすよ。ドルね。つまり億単位なんです。本編で、ジミーの家の値段がチラリと出てきますが、俺字幕のミスか聞き間違いか、一瞬悩んだもん。年収1200万円でも「低所得層」に分類される異常な世界。家が無い・車中生活は珍しくない世界なんです。


そんな家を夢見る黒人青年2人の話なわけで、内容は格差・郷愁・誇り・友情・別れの物語。そして、生まれ育った家や町に対する愛情の物語ですね。家は、一生住める場所とは限らない。町だって、美しいところもあれば、汚れて腐った地区だってある。そしてそこでの思い出も、真実とは限らない…でも、離れたって憎んだって、そこが故郷なのは変わりない。ジミーはきっとそう思いながら、ボートを漕ぎ出したんじゃなかろうか。胸に響くラストでした。
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