映画狂人

空の青さを知る人よの映画狂人のレビュー・感想・評価

空の青さを知る人よ(2019年製作の映画)
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埼玉県秩父市を舞台にした秩父アニメ三部作の三作目、通称「空青」。

「井の中の蛙大海を知らず、されど空の蒼さを知る」

夢と希望に満ち溢れた18歳の自分と燻ってやさぐれている31歳の自分…過去と現在が交差した瞬間、人生は再び輝きを取り戻す。
登場人物の年齢設定や境遇が現実の自分にぴったり当て嵌まり、新海誠が言うように
「これは自分のためだけの映画だ、と思ってしまう人がきっとたくさんいる」そんな作品だった。
実在する場所を舞台にしながらもアニメでしか出来ない表現を追求した三部作、その最後を飾るに相応しい澄み切った青空のように真っ直ぐ爽やかな一本。
声優を誰が演じているのか全く知らず鑑賞したのだけれど、言われなければ気付かないぐらい皆想像以上に感情表現豊かで上手い。
中でもアニメ声優初挑戦となる吉沢亮は18歳と31歳の同一人物を微妙な声のトーンの変化等で見事に使い分けており、プロの声優と比較しても遜色ないほどキャラクターに命が吹き込まれている。
因みにあいみょんが歌う主題歌「空の青さを知る人よ」は慎之介目線、エンディングテーマ「葵」はあおい目線でそれぞれ描かれており世界観に違和感なく溶け込んでいる。
一方で最近の日本アニメで乱発される描写に苦笑してしまう部分もあった、青春の勢いを体現するにはもってこいの演出ではあるが大多数の人が『千と千尋の神隠し』のあのシーンを想起するはず。
直視出来ないほどの思春期の眩しさに若干の気恥ずかしさを感じつつも、不登校や引きこもりの過去を持つ岡田麿里らしい葛藤と逡巡の物語には毎回嘘偽りがなく真に迫るものがある。
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