やまだ

空の青さを知る人よのやまだのレビュー・感想・評価

空の青さを知る人よ(2019年製作の映画)
3.9
全力で青臭い「井の中の蛙」
「ガンダーラ」の歌詞は予習しましょう
エンドロールは絶対見てください
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私自身もバンドでベースを弾いているので、演奏シーンなんかはちょっと厳しめに見てしまったのですが
大変満足のできる仕上がりでした。
あおいのベースは実在するモデルと同様の物で、劇中の音もまさにそのもの
アニメ的にするためか現実と全く同じとはいいませんが、いい音でした。
ゴリゴリと押し通す芯のある音はあおいのキャラクターともぴったりです。

ドラムとベースだけで演奏するシーンがあったのですが、歪んだ力強いベースはdeath from above 1979というバンドと重なりかっこいいです。
こういった音の部分はバンドやってたり音楽好きでない限りは気づく人は少ないだろうし、別の種類のベース音を合わせても問題はないように思いますが、あえてそこも寄せていくというこだわりが見えてよかったです。
作画も破綻がなく、ピッキングなんかもしっかり描き起こされていて驚きました。完コピです。
ロトスコープで作画したのでしょうけど、本当に大変だったんだろうなぁ………

本編の内容ですが、まず作画はさすがのクオリティでした。
背景美術は水彩っぽさがあってどこか漫画や絵画的で、寄りで見る物もリアリティがあります。
キャラの表情も豊かで、その時々の感情がしっかり伝わってきました。
完全にリアルに寄せるのではなく、アニメらしさの範疇に収めていたためキャラが浮くこともありませんでした。
そのあたりのバランス感覚は素晴らしいと思います。

ストーリーはとにかく青臭い。
人が抱えるチクッと痛む感覚をこれでもかと拡張して組み立てられていました。
高校生の感情が主軸ですが、誰しもが共感出来るものでしょう。
そのあたりは他の作品にもあるような岡田麿里さんの脚本っぽさがあります。
あのはなやここさけを楽しめた人は今作も楽しめるはずです。

作中のテーマとしては「井の中の蛙大海を知らず、されど空の青さを知る」が挙げられています。
まさにそのとおりでした。えぇ、観ればわかる。

また、作中に印象的に取り上げられるゴダイゴの「ガンダーラ」
これも先のことわざ同様にストーリーに深く関わる楽曲ですので、是非とも歌詞を見てから鑑賞していただきたいです。


さて、ゲスト声優の演技なのですが
吉沢亮さんの演技はさすがでした。一人二役をしっかりこなしていて、浮くことなく違和感がありませんでした。
吉岡里帆さんは………なんともいえずふわふわしていました。
上手だとは思います。全編通して違和感は少なかったですし、一部のジブリ作品みたいに「ふざけるな」と(個人的に)思わなかったです。

声質は非常によくてアニメーションとの親和性もかなり高かったのですが、いまいち感情が乗り切っていないような……?
自分を殺してあまり表に感情を出さないあかねの姿とリンクしていますし、声質も馴染んでいたのでそこまで気にはなりませんでしたが………あえてなのかな?


長くなりましたが、個人的にはここさけより好きな作品です。
全力で青臭くてエネルギッシュで「そうはならんやろ」って点もありますが
そこはフィクションのアニメですから「なっとる!やろがい!!」って楽しみましょう。
それが苦手で整合性を気にしてしまう方は合わないかもしれません。

そしてエンドロールなのですが、本編と関連した後日談的なものになっているので、普段エンドロールで退出する人は今作は退出せずに最後まで観てください。

本当に長くなってしまいました…………

最後に、ですが
個人的にはおすすめできる映画だと思いました。
同時期に公開されている「ジョーカー」でボコボコにされたメンタルが癒やされました。

スカッとした感覚が残るストーリーですので悩んでいる方は劇場へ

ここまで読んでくれた方
本当にありがとうございます。
やまだ

やまだ