ビデオや鏡越しに映る人物、謎の女が性的衝動に駆られるメス、支離滅裂な物語、極端に変態的な登場人物といった佐藤寿保&夢野史郎コンビが描き続けた世界の結実点で、唯一無二の映像世界に仕上がっている。。
物語や常識なんてくそくらえと言わんばかりの展開や荒っぽい編集にパンキッシュな精神を感じさせ、その中で繰り広げられる変態的なSMによる饗宴を見ているうちにいつしか自分の中に潜んでいる暴力性がむき出しになる気分に。話よりも映像が優先される、極めて衝動的な世界という意味では映画よりもMTVに近い。
しかし暴力的な一方でたびたびインサートされる江戸川乱歩の『鏡地獄』を思わせる映像や、光と影を活用した映像が独特の美的映像になり、嫌悪感があってもどこか魅了されてしまう。そしてラストの鏡によって歪んだヒロインの伊藤清美の顔の凄まじさたるや、どんな暴力やホラーよりも怖くて思わず発狂しそうになった。
でも一番狂っているのは肝心の物語をぶつ切りに終わらせ、これから主人公に起こるはずの狂気を描かないところ。まるで狂気が自分に伝染し、その行為を自分達が完遂させるべきだと強制されているような嫌な気分にさせる。
佐野和宏の『もどり川』のショーケンのようなクレイジーなサディストっぷり、一人二役を演じる伊藤清美の体当たり演技も映画を見事に盛り上げる。
