ほおづき

ひとよのほおづきのレビュー・感想・評価

ひとよ(2019年製作の映画)
5.0
子供を虐待する夫を殺した母と、その3人の子供(兄弟妹)たちの物語。

これすごく面白かった。
結局嫁に手をあげてしまう兄。
結局DVの彼氏を選んでしまう妹。
アンビバレントな感情に揺れる素直じゃない弟。
登場人物みんなにそれぞれの葛藤があって、親目線や子供目線、他人目線などの複雑な心情が交差していて、それなのに分かりづらくもなく、モチーフの割には重くもないストーリーがとても心地よい作品だった。

犯罪者の家族を描く物語は何か小説とかで何回か覚えがある。『葛城事件』という映画でも犯罪者の家族の葛藤を描いていたけど、あちらは重くるしい雰囲気の記憶しかなく2回目観ようとは思わなかった。

こちらは、各場面で情報量多くて2時間以上観てたかと思っちゃっうくらい登場人物の思惑が多すぎで、「おばあちゃん殺しちゃったよ」ってクダリでさすがに負の連鎖もういいよーってなったけどw、全体的には過剰な残酷シーンや理不尽な仕打ちなどのシーンはあんまり無く、どことなく優しい雰囲気があって、もう一回観てもいいかなとも思える陽気さと温かい家族愛があった。

個人的には”いやがらせ”が母にバレてから、兄が離婚届にサインする流れで涙腺崩壊が止まらなかった・・・
そこまで複数の点でしかなかったいろんな人の心情が線で繋がって、感情が交差して一気に一つの点になる感じ、すごく好き・・・

そしてそこからの万引きで母親のどやぁw
感動のシーンにちょこちょこ入る笑いのコンボがサウナと水風呂って感じでエモい。

もしかするとそのあたたかい雰囲気は、田中裕子さんの不思議な優しさ、松岡茉優さんのコミカルさ、両女優の存在感かもしれない。
終始母親役の田中裕子さんに引き込まれてしまっていた・・・田中裕子さんも松岡茉優さんも啖呵切ったときのドスのきいた声が耳に心地いい・・・w


ぜんっっぜん関係ないけどw、タクシー激突のところから飛び蹴りくらいまでの流れ、長回し1カットだったから、ちょっと驚いていてその後があんまり頭に入って来なかったw
映画的なクライマックスのためには必要だったのかもしれないけど、蔵さまのエピソードって要らなかったんじゃって思う。どんなに善人面してても、もうこの人絶対イヤなやつでしょ感出てるから、出て来るだけであーラストの盛り上がりに絡んでくるなって思ってしまうw


ぼそぼそと形がいびつなおにぎりが、めちゃくちゃ美味しそうって思った。こういうおにぎりいいよねって思ってしまう。