理不尽に子どもに暴力を振るう父親を母親が殺す。それが正義か否かではなく、それによって壊れた家族の形の変動の物語。
吃音で社会に溶け込めない優しい長男と、反逆精神を内に秘めた次男、家族想いな妹。どこをとっても自分の家とかぶっていて見ていて辛かった。同じ経験、辛さを背負ったきょうだいだから助け合って生きれたらいいのに、色んなことに対して時間が立ちすぎてうまく擦り合わず、壊れた形は修復されない。
特に次男、本当は心のどこかで愛に飢えているのに、強烈な経験によって傷ついた心が反逆的な発動をし、悪事として表明することで消化しきれない自分の心を癒そうとする、そんな在り方とリンクした。あの夜から積み上げられた心の叫びが時折垣間見える。
だけど、母親戻ってきてからの目頭が熱くなるシーンがたくさんあった、妹の存在がかなり気の利く役割として大きい。素直に立ち振る舞える言動から心にあたたかみのある人間性を感じ取らせる。きっと誰よりも家族が家族としてまとまることや、安心できる関係を願ってきたことの投影だろう。
こんなに子ども想いで、自分を犠牲にしてまでも行動が取れる、守ってくれる、いい母親じゃないか、羨ましいって思うよ、なんせ、僕にとってはいろんな意味で大きな作品だと思った。心が痛い。
