EDDIE

デッド・ドント・ダイのEDDIEのレビュー・感想・評価

デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)
3.0
ジム・ジャームッシュの放つ超絶ゆる〜いゾンビコメディ。真顔でシュールなやりとり、皮肉めいた演出やオマージュ、常にマイペースな作風に戸惑いが隠せない。現代社会を風刺したようなメッセージがあるが万人にはオススメしづらい内容。

遂にやってきました!映画館!最後に映画館鑑賞したのが3/21の『殺さない彼と死なない彼女』だったので、実に2ヶ月以上ぶりの劇場鑑賞でした。いやぁ待ち遠しかった…。
まだまだコロナの感染拡大は安心できませんが、やはり趣味ができないと心も荒んでしまいます。徐々にではありますが、映画館の売上にも貢献できるようにいたします。

さて、久しぶりの劇場鑑賞がジム・ジャームッシュ監督のゾンビコメディ映画。同じくアダム・ドライバー主演の『パターソン』は私のお気に入り映画の一つですが、「え?ジャームッシュ監督がゾンビ映画を撮るの?」と驚きとワクワクが隠せませんでした。
しかし、なかなか戸惑うこの作風。個人的に嫌いではないものの、『ゾンビランド』とか『ショーンオブザデッド』みたいなゾンビコメディを期待すると肩透かしを喰らうので要注意です。
よく見てください。監督はあのジム・ジャームッシュです。市場に溢れた一般的なゾンビ映画を撮るはずがありません。

映画が始まってみるとなかなか登場しないゾンビたち。序盤はビル・マーレイ演じるクリフ・ロバートソンとアダム・ドライバー演じるロニー・ピーターソンら2人の保安官のシュールな漫才のようなやりとりを堪能します。爆笑を誘うようなものではなく、あまりにもシュールなやり取りにクスリとさせられるところは多いです。

いざ事件が起こり、ゾンビたちが暴れだしますが、他のゾンビ映画のようなハラハラドキドキはなく、ここも緩い。

この作品に出てくるゾンビたちは人間の血肉を求めるだけでなく、生前に馴染みのあったモノを求め彷徨います。
シャルドネワインを求める酒臭いおばさんゾンビ。オモチャやお菓子を求める子供のゾンビもいます。Wi-Fiとかもうなんのこっちゃってものまで探し求めるゾンビたちに戸惑いを隠せない我々鑑賞者。

この作品でジャームッシュ監督が伝えたかったのってまさに現代を生きる我々自身を風刺することですよね。目の前で大事件が起こっても、世界を賑わす大恐慌が起きても、日々生きているのが当然のように過ごしながら物欲を満たしている我々を。なんならWi-Fiルーターを探し求めカフェを彷徨う我々をも風刺しています(はい、私のことですね)。
映画の世界でゾンビは死人ですが、死してもなお物欲を求めるのかと。

まぁ正直心から面白いかと聞かれたら「面白くはない」と言ってしまう私がいると思います。ただこの風刺の仕方は絶妙で、映画としてはなかなか皮肉がきいていい作品なのではないかと感じました。
何よりもビル・マーレイとアダム・ドライバーのシュールなやりとりは眉唾物ですし、日本刀を振り回すティルダ・スウィントンはカッコいいですし、スティーブ・ブシェミの扱いもかなり雑なところがツボです。ダニー・グローバーもいい役所でしたが、彼のような名優ですら最期は雑な扱い。セレーナ・ゴメスも久しぶりに観れましたが、彼女『ドクタードリトル』や『レイニーデイニューヨーク』にも出演してるんですね。今年はセレーナをたくさん観られそう。

スターウォーズネタやアダムのデカい図体で小さい自家用車で登場するシーンとか、どれもシュールなんですよ。ただアダムのこの登場シーンはあまりにもツボすぎました。

とにかく万人にはオススメしづらいし、ジャームッシュ監督デビュー作としてもオススメしづらいので、アメリカの風刺ものブラックジョークとか好きな人は是非観てくださいという程度に留めておきます。

※2020年劇場鑑賞60本目
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