Tatsu

デッド・ドント・ダイのTatsuのレビュー・感想・評価

デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)
3.6
自らがゾンビ映画であることに自覚的なゾンビ映画、という時点で厄介で、ジャームッシュのジャンル映画論的な部分がかなりを占める作品なので、一般的に面白い映画かというと、そこからはかなり外れる映画だと思う。かろうじて役者の演技だけをみてる分には楽しめると思うが。
ゾンビ映画を、「外側から来る問題」として描き、現代の分断した世界をメタファー的に描写するという、ある種常にゾンビを通して社会、世界を描いてきたロメロの本質的な部分を継いでるとも言えるし、内の人物の打ち解け合いや生活ののっぺりとした時間の引き延ばしを描いてきたジャームッシュが、そのことを描くというのは興味深くはある。
しかし、いかんせんファーストショットの墓場から、マーレイとドライバーが森に入っていく場面のショットとしての甘さが正直キツくはあるし、そういった映画的な美点は少なかったと感じる。夜の場面は相変わらず魅力的だが。いつもののっぺりと引き延ばされた時間も、今回は弛緩でしかなく。マーレイ、ドライバー、セヴィニーが順々にダイナーに入り惨殺死体を確認する場面のカットの使い回し方とかは、一周回って面白い。人が食い荒らされてる→墓の死体が消えている→ゾンビの仕業だとなる明解な雑さも心地いい。楽屋落ちと言われたらそれまで。ただ、ジャームッシュによるジャンル映画論、カルチャー解体書的な意味で個人的には結構楽しんでしまった。
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