jam

9人の翻訳家 囚われたベストセラーのjamのレビュー・感想・評価

3.9
頭が単純なせいか、ミステリーの謎解きはそれほど得意ではないのです。

世界的ベストセラー小説の最新刊
各国で同時発売するために集められたのは9人の翻訳者たち
機密保持という名目で外部との接触を絶たれた状況で、1日20ページずつ翻訳していく

実際にあったシチュエーションをヒントに、ということですけれど
そこまでするのは、利益を上げたい出版社の思惑あってのことで
この出版社社長がランベール・ウィルソン

彼と著者とのやりとりから様々なことを推測しながら観ているわけなのですが
予想を軽く裏切ってくるので、飽きることなく楽しめました。

後半の畳み掛けるような展開、
アクションもありハラハラさせられ
けれども
というか、やはり
私が興味を持つのは人の心

小説のヒロイン、レベッカに過剰に感情移入するカテリーナの一途な想い(ロシア)

生活していくために、翻訳とウェイトレスの二足の草鞋を履くパンキッシュなマリア(ポルトガル)

なかでも、切なかったのは
小説家になりたくて、けれども家族を養う為に翻訳の仕事をしているシセ(デンマーク)
細々と著していた自身の小説
才能が無い、という辛すぎる現実…


ミステリーとして楽しむ一方
人間ドラマとしても感じるところがある、そんな作品でした


さあ、読みたくて買った"積ん読本"を
そろそろなんとかしなくちゃ…


そして、今回は文芸翻訳家の越前敏弥氏とこの作品の字幕を担当された字幕翻訳者の原田りえ氏のトークショー付きでした。

実際に「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズの翻訳を手掛けられた越前氏からは翻訳家の監禁についての興味深いお話が聞けて。
更に、原田氏(ランベールがお気に入り)からは多言語の飛び交うクライマックスシーンの字幕の苦労話なども。
何度見ても新しい発見がある、そんな作品と、お二人とも太鼓判を押されていました。
jam

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